企画展示をより楽しく、より深く鑑賞していただくため、本館の広報担当職員が企画展示の担当者から展示の見どころや作り手の気持ちを取材します。

今回は3月10日から開催する企画展示「大ニセモノ博覧会-贋造と模倣の文化史-」の代表者である西谷大教授(研究部考古研究系)にお話をうかがって来ました。

展示案内「大ニセモノ博覧会」

各回リンク
第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回

第4回 コピー・イミテーションの世界

 他にはどういったニセモノがあるんでしょうか。

西谷:今回、考古学の資料もいくつか展示しますが、その一つは中世の天目茶碗です。天目茶碗は中国から伝わってくるのですが、日本では流通していた数が少なかったんですね。そこで瀬戸では何とかこの天目茶碗を作りたくて試行錯誤します。本来天目茶碗は磁器なのですが、それを陶器の瀬戸焼でつくり、さらに上から黒釉をかけて本物に似せようとします。

 コピーをつくるわけですね。


天目茶碗〈建盞〉(本館蔵)
※中国・北宋時代の天目茶碗 


天目茶碗(本館蔵)
※中国産の天目茶碗をコピーして、瀬戸窯で焼かれたもの

西谷:コピーだけれども精巧につくられていて、ホンモノの天目茶碗には釉が垂れてできた釉だまりがあるのですが、その釉だまりも再現しようと形作っています。

 手が込んでますね。

西谷:さらに小田原まで行くと、もっと質が落ちたものが製作されます。小田原のものは釉だまりを漆を使って再現しようとしています。つまり、コピーのコピーというわけです。天目茶碗というブランドへの憧れが、こうした涙ぐましい努力を生み出したんだと思います。

 当時の天目茶碗への憧れはすごかったんですね。

西谷:次はもっとえげつない話です。これは小田原で出土した挟み皿です。


縁釉挟み皿 神奈川県小田原城下本町出土
(小田原市教育委員会蔵)

これは本来瀬戸焼をつくる際に使うもので、焼く時に重ねたお椀やお皿がくっつかないように間に挟み込むものなんです。その挟み皿にちょっとだけ釉を塗って、瀬戸から小田原に持って行き、販売しているんです。

 それって・・・。

西谷:つまり生産地では皿として使っていないものを、騙して売りつけているんですね。出土品からはちゃんと使った跡も確認できるので、小田原の人たちは騙されて使っていたようです。

次に、これは縄文時代の貝輪(かいわ)で、南西諸島のイモガイなどの真っ白な貝でつくられた腕輪なんです。この腕輪が東北地方の沿岸地帯まで伝わっていき、海岸部の首長クラスの人のお墓からはこの白いきれいな貝輪の埋葬品が出土しています。


人骨・貝輪 茨城県三反田蜆塚貝塚出土〈F4号〉
(ひたちなか市教育委員会蔵)

 流行のアクセサリーだったんですね。

西谷:ところが、ちょっと山の方に入っていくと素材の貝が手に入らないんですよ。それでどうするかと言うと、土でつくって、さらにその上にわざわざ白い色を塗って似せるんです。本物は貝なので軽いのですが、コピーは土なので無茶苦茶重いんですよ。


貝輪形土製品 栃木県荻ノ平遺跡出土
(栃木県教育委員会蔵)

 身に着ける方も大変ですね。

西谷:それでもやっぱり欲しいから作るんですね。憧れがあるけれど、手に入れることができなくてコピーを製作する。現在のブランド品のコピーと似ていますね。そういう人間の心の部分は、縄文時代からあまり変わってないのかも知れません。

第5回に続く