企画展示をより楽しく、より深く鑑賞していただくため、本館の広報担当職員が企画展示の担当者から展示の見どころや作り手の気持ちを取材します。

今回は3月10日から開催の企画展示「大ニセモノ博覧会-贋造と模倣の文化史-」の代表者である西谷大教授(研究部考古研究系)にお話をうかがって来ました。

展示案内「大ニセモノ博覧会」

各回リンク
第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回

第1回 ニセモノにも愛を!!

よろしくお願いします。

西谷:今日は何でも聞いてください。


西谷大教授

まず今回の展示を企画されたきっかけを教えてください。

西谷:いくつかありますが、一つは最近「ニセモノ」が世間を騒がせることがたくさんありますよね? 食品偽装や偽ブランド品などいろいろな話題がニュースで流れています。ただ、実際はそんなに「ホンモノ」と「ニセモノ」ってはっきりと黒白つけられるものではなく、もっと複雑な関係にあるものと考えています。

もともと骨董品の鑑定などでモノの価値をお金で決めてしまうということに不満がありました。ニセモノと鑑定されることでそのもの自体に価値がないように扱われてしまいますが、ニセモノにも持っていた人や家の歴史が詰まっているはずで、それを五千円の価値しかないと切って捨てられるものではないでしょう。今回の展示ではニセモノ=悪いもの、価値のないものという単純な捉え方を問い直したいという思いがあります。「ニセモノにも愛を向けなきゃいかん!」ということです。

ニセモノへの愛が企画のもとになっているんですね。

西谷:もう一つは、博物館の面白さを伝えたいと思っています。博物館って、展示してある資料はごくごく一部で、本当にいろんな種類の資料をたくさん持っているんですね。それを全然違う視点でお見せできれば、もっと面白い展示ができるはずだと考えています。

そこで今回は特定の範囲に固まることなく、さまざまな資料を時代や地域を超えてお見せしようと思います。展示プロジェクトのメンバーも20人近くいるのですが、美術史学、考古学、民俗学とみんな専門分野が違います。資料もジュラ紀から現代まで非常に幅広いものをお出ししますよ。

展示場にどんな資料が並ぶのか楽しみです。

西谷:さらに言えば、昔大英博物館でフェイク展という所蔵資料からニセモノを集めた展示を行ったことがあって、自分はそれを雑誌の特集で見たんですけれど、「すごいなぁ。博物館がこんな面白いことやるんだなぁ」と思っていました。その時から展示の構想を練っていたわけではありませんが(笑)。

ですので、一つのきっかけで企画した展示ではなくて、いくつもの思いが重なってできたものが今回の大ニセモノ博覧会になります。

第2回に続く