企画展示をより楽しく、より深く鑑賞していただくため、本館の広報担当職員が企画展示の担当者から展示の見どころや作り手の気持ちを取材します。

今回は3月11日から開催する企画展示「歴史にみる震災」の代表者である原山浩介准教授(本館研究部歴史研究系)にお話をうかがって来ました。

歴史にみる震災

担当者インタビュー ページインデックス
第1回 第2回第3回

場所と時間の軸から、震災を見つめる

原山先生

今日はよろしくお願いします。

原山: よろしくお願いします。

まず、今回の企画展示を開催するきっかけについてお伺いしたいと思います。

原山: 第5展示室「近代」がオープンして約20年が経ちますが、その間災害史などの分野で研究の進展がありました。そこで2010年の第6展示室のオープンと前後して、第5展示室の震災に関する展示内容を一部見直し、最新の研究成果を反映させるよう検討を始めました。そうした動きの最中に東日本大震災が起こったのです。

東日本大震災を受けて、当館でも震災に対してどう向き合うべきかという問題が突きつけられました。そこで、第5展示室の一部見直しから大きく展開し、企画展示という形で震災と向き合い、その成果や課題を踏まえて今後の常設展示の見直しにつなげようということになりました。

ですので、一つは災害史研究の進展とどう向き合うか、もう一つは東日本大震災を経た今、どういう形で震災の展示をつくっていけばよいのか、という二つの点が今回の企画展示のきっかけとなっています。

今回の企画展示は、第1章が「東北の地震・津波」、第2章が「近代の震災」という2部構成となっていますが、これにはどういった狙いがあるのでしょうか。

原山: 第1章では、東北という場所から少し長い歴史のスパンで震災というものを捉え直してみようという意図があります。前近代の資料は、数としてはさほど多くはないのですが、地震がくり返し起こるものであるということを東北という場所に根ざして考えることができると思います。

第2章では、近代以降の地震を取り上げます。近現代の社会の中で、震災はどういう意味を持っていくのか、どういうインパクトをもたらしてきたのか、そういったことを考えていく必要があると思ったからです。

よく分かりました。それでは、第1章から詳しく伺っていきたいと思います。

震災を見つめる視点の変化

岩手県 青森県 宮城県 大海嘯画報
「岩手県 青森県 宮城県 大海嘯画報」(本館蔵)

原山: 貞観地震津波・慶長地震津波については、資料が多くあるわけではありません。また、残っている資料も現地から遠いところからの視点によるものが多いです。

ところが、明治三陸津波や昭和三陸津波の頃になると、より当事者の目線に近い資料が増えていきます。また、時代が新しくなってくると、遠くにいる者でも被災した者と同じような視点に立たなければならないという意識が強くなっていきます。さらに写真を通じた報道なども出てくるようになります。

時代によって視点も変化していくわけですね。

原山: 当事者以外がどのように地震や津波を見るのかという点については、それぞれの時代によって目立った視点があります。ただしAという視点がいきなりBになるというわけではなく、私たちも含め、自分の中に複数の視点を同時に持っているのだと思います。そうしたことが、少し長いスパンで震災を見ることによってより明確になるかもしれません。

続いてチリ地震津波について伺いたいと思います。

原山: チリ地震津波をめぐっては、大船渡の被害が大きかったので、そこを中心に取り上げています。また、チリ地震津波で重要な点は、国を越えた被害が発生したということです。この津波は、チリ地震によって発生した津波が太平洋を渡って日本まで来たものですが、当然日本に来る過程でハワイなど太平洋の島々にも大きな被害をもたらしました。つまり津波は一国の問題ではないということです。そのことは東日本大震災でも同じであって、津波の被害はハワイやアメリカ西海岸に及んでいます。

また、チリ地震津波の経験をされた方の中には「チリ地震津波の時には津波はあそこまでしか来なかったから、家にいれば大丈夫」と考えていたところ、実際にはチリ地震を超える津波に襲われてしまったという方が多くいらっしゃったそうです。私たちは過去に起こった大きな地震や津波の記憶を連綿と持ち続けるのではなく、実は直近の災害をベースに物事を考えてしまうことがあるということも同時に考える必要があります。

非常に難しい問題ですね。

東日本大震災といかに向き合うのか

救った被災物をクリーニングする
文化財レスキューの様子
「救った被災物をクリーニングする」

東日本大震災についての展示もあるのでしょうか。

原山: ありますが、非常に限られた展示スペースとなっています。まだどのように向き合っていけばよいのかを様々な研究の分野から模索している状態であって、何かをまとまった形で提示できる段階ではないと考えています。

その限られたスペースの中で、まず当館と宮城資料ネットが行った被災資料のレスキュー活動を展示します。そしてレスキュー活動を行った方々に関係者の視点から選んでいただいた写真もお見せします。さらに、東北地方の村落調査の過程で被災後の地域の変容を捉えた写真や、現在福島で行われている土壌調査についてもご紹介します。

東日本大震災とどのように向き合っていくのかという点は大きな課題ですね。

原山:はい。ただ、過去の震災を見ていくことで、今回の震災を考える上でのヒントになることがいくつもあると思います。それは21世紀とそれ以前が全然違うということを発見するかも知れませんし、一方で同じような問題がくり返し起こっていることを見つけるかも知れません。展示をご覧になりながら、そうしたヒントを探していただければと思います。

第2回に続く