企画展示をより楽しく、より深く鑑賞していただくため、本館の広報担当職員が企画展示の担当者から展示の見どころや作り手の気持ちを取材します。

今回は10月8日から開催する企画展示「中世の古文書機能と形」の代表者である小島道裕教授(本館研究部歴史研究系)にお話をうかがって来ました。

展示案内「中世の古文書 -機能と形-」

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30周年にふさわしい企画展示

小島道裕教授

今日はよろしくお願いします。

小島: こちらこそよろしくお願いします。

まず、今回の企画展示を開催するきっかけについてお伺いしたいと思います。

小島: 体系的な面からお話しますと、当館は大学共同利用機関という形態をとっており、なおかつ博物館型研究統合という研究スタイルをとっております。その研究スタイルに基づき、何年間か共同研究を行い、その後研究成果を展示で公開するのが一つのパターンになっています。

はい。

小島: 一方で、当館は資料を収集・調査・研究していくという博物館として非常に重要な側面も持っています。ちょうど当館は今年で30周年を迎えていますが、収集した資料とその研究の蓄積も膨大なものがあります。その蓄積をただ所有するだけでなく、広く公開していかなければならないという思いが今回の企画展示には込められています。

30年間の蓄積が今回の企画展示の基盤となっているわけですね。

小島: そうです。特に当館は考古・民俗・歴史とさまざまなジャンルの資料を収集していますが、この30年間の中世文書の収集については質・量ともに世界一と言えます。

世界一!それはすごいですね。

小島: もちろん国宝や重要文化財といった古文書のコレクションを数多く所蔵しているところは他にもあります。しかし、他館のコレクションは特定の家やお寺に伝わった古文書で、武家文書だけ、寺家文書だけといった形になり、総合性が高くはありません。ところが当館の場合はそうではなく、いろんな文書がいろんな所から集まっているので、非常に総合性の高い古文書のコレクションとなっています。これが一つの大きな特徴です。

なるほど。他館のコレクションとは総合性が違うんですね。

小島: そうです。こうした文書は古本屋を通じて購入したものもありますが、コレクターがお持ちだったものがかなりまとまって入っています。コレクターが収集したコレクションはそれだけで総合性が高いんです。それがいくつも集められることによってさらに総合性が高まり、結果的に中世文書のあらゆるジャンルが当館に集まっている、という形になっています。

すごいですね。

小島: 一方で家わけ文書も越前島津家文書や石見亀井家文書など錚々(そうそう)たるものを当館は所蔵しています。

小島: 30年間でこれだけのコレクションを形成したことは、非常に価値があることだと思います。ですので、そのコレクションを一度きちんとお見せしようと思ったわけです。なかなか30周年にふさわしい企画でしょう?

はい。まさに当館の30年の歴史が込められている展示ですね。

空前の総合的中世古文書展!

織田信長朱印状
(1581年・石見亀井家文書・本館蔵)

ホームページに「空前の総合的中世文書展」とありますが、これは今お聞かせいただいた当館のコレクションの特徴と関連しているわけですね。

小島: そのとおりです。「総合的」という言葉がとても大事です。これまでにも、国宝や重文がたくさん出品された古文書の展示がありましたが、今回の企画展示は古代の正倉院文書から秀吉・家康の近世文書まで流れを追って見ていただけます。こういう展示は従来なかったものです。

今回の企画展示の特徴として、時代も古代から近世に入るまでと幅があり、なおかつ文書のジャンルも非常に豊富であることが挙げられるわけですね。

小島: そのとおりです。武家だけ、寺家だけということではなく、上は天皇から下は庶民まであらゆるジャンルの文書をそろえています。このように中世文書の全貌を示す展示は初めてだと思いますし、画期的なことだと考えています。

そうすると今回の企画展示を見れば中世文書の全体像が分かるということですね。

小島: まさにそういうことです。中世文書の全体像が分かるということは、中世の歴史が分かるということでもあります。当然文書はそれぞれの社会背景に応じて作られているわけで、あらゆるジャンルの中世文書を見るということは、中世社会のあらゆる側面を見るということでもあります。

なるほど。

企画展示チラシ

小島: また、今回の展示は古文書学の展示でもあります。古文書学とはただ文字を読む学問ではありません。文書の目的や機能に応じてさまざまな様式が作られていく、というのが古文書学の基本的な考え方ですが、これは言葉を返せば、様式を読み解くことでなぜそういう形がつくられたのかという背景が分かってきます。今回の企画展示の副題「-機能と形-」はここから来ています。

機能に応じて形がつくられていき、形を読み解くことでその背景を知る-。副題にはそういった意味が込められているんですね。

小島: 学術的にも古文書学自体を実物の文書でこれだけ展示という形で示したことは、これまで例がないと思います。大学の先生方にもこの展示を見れば、古文書学概論がすぐできてしまうと言っています。もっと言えば、企画展示のチラシには中世文書の代表的なものを10点選んでいるのですが、これを説明するだけでも古文書学概論ができてしまいます。

小島:そういう総合性の高い、学術的な背景に基づいた展示であるわけです。ただこういう資料を持っているからお見せします、というわけではないんです。きちんと学術的な背景に基づいて収集を重ねた結果、学術的な体系による展示が可能になったと。これが当館の30年の成果であると言えます。

第2回に続く