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特別企画 紀州徳川家伝来の楽器

特別企画 紀州徳川家伝来の楽器

開催要項

開催期間 平成17年8月13日(土)〜9月19日(月・祝)
入 館 料 通常料金
休 館 日 8月15・22・29日、9月5・12日

趣旨

本館が所蔵する紀州徳川家伝来楽器コレクションは、主として紀州藩の第十代藩主徳川治宝(1771〜1852)によって収集されたものと伝えられます。意欲的な文化政策を推進したことで有名な治宝は、のちの伝えによれば、特別に勅許を得て黄金五万両を投じ、国内外、古今の楽器を集めたといいます。

コレクションは、雅楽の楽器を中心に、吹きもの(管楽器)・弾きもの(弦楽器)・打ちもの(打楽器)などの各種楽器や、楽譜、調律具を含めて総数159件、231点におよびます。点数や楽器種の多彩さ、その内容から、楽器史や音楽史上きわめて重要な、日本を代表する古楽器コレクションとみなされてきました。華やかに装飾された附属品、楽器にまつわる情報を記した附属文書に恵まれていることも、このコレクションの重要な特色のひとつです。

今回の小企画では、これらの中から約90点をとりあげ、雅楽器を中心とする多様な古楽器の世界を概観していただきます。現代の日本人にはかなり縁遠い存在となってしまった伝統音楽ですが、近年、学校教育の場でも和楽器が扱われるようになって、次第に関心は深まりつつあり、再評価の気運が高まっています。13年ぶりにまとまって展示される古楽器の数々をご覧になりながら、古の人々の心に響いた音色に思いを馳せて下さい。また、楽器や附属品の隅々にまで凝らされた高度な美術工芸技術をご堪能いただきたいと思います。

展示構成

徳川治宝の楽器収集

紀州徳川家に伝来した古楽器のコレクションは、十代藩主治宝がほぼ一代で築きあげたもので、よくみられる大名家伝来品とは少し性格が異なります。治宝による楽器収集の経緯と特色、時代背景などにせまります。

(1)楽器への熱い思い

治宝自身が撥面に夜桜の絵を揮毫した琵琶「花月」笙「真具寿」への思いを綴った治宝自筆の「真葛笙記」などを通じて、藩主の楽器への並々ならぬ熱意を感じとってください。

(2)治宝の生きた時代

徳川治宝 VS 井伊直亮 二人はライバル?  
治宝が楽器収集に夢中になっていたのとほぼ同じ時期、競い合うように楽器を集めていたのが彦根藩十二代井伊直亮でした。近代的意味でのコレクターが出現したのがこの時代だったのです。

復古趣味と古物収集

治宝や直亮が生きた江戸時代後期は、松平定信による『集古十種』の編纂に代表されるように、古典への関心が深まり、復古趣味や古物収集が盛んとなった時期でもありました。彼らの楽器収集はそのような時代の風潮を背景に始まったと想像されます。中国、唐時代の楽器と伝えられる七絃琴「冠古」は『集古十種』にも載録されており、当時から有名な古楽器でした。

雅の調べ -雅楽器とその他の古楽器

紀州徳川家伝来の楽器コレクションの大部分は、雅楽のための楽器で占められています。ここでは、コレクションに含まれるそれぞれの雅楽器を種類ごとに紹介していきます。同時に、雅楽器がその他の楽器とも深いつながりをもっていることを示します。

     吹きもの ・篳篥・龍笛・高麗笛・神楽笛
          <龍笛と能管> <中国の笛>
     弾きもの 琵琶・和琴
          <平家物語と琵琶>
     打ちもの 太鼓・鞨鼓・壱鼓・笏拍子
     楽譜・調律具

楽器の装い

古来、公家や武家の社会においては、音楽は文学とならぶ教養ととらえられていました。名器といわれた楽器は、音楽を演奏するための道具としてはもちろんですが、彼らの文化的生活の象徴的存在として、あるいは精神のよりどころとして、秘蔵、伝授され、愛玩されたのです。それぞれの楽器に雅な銘を付けたり、美麗に装飾された箱や袋などの収納具で幾重にも大切に包んだりする習慣は、どことなく茶道具の扱いにも似ています。こうした楽器のもつもう一つの側面、すなわち音を奏でるという楽器本来の機能を超えた楽器の役割について紹介するのも本企画のねらいのひとつです。

美しさをもとめて

楽器には、音色の美しさのみならず、外観の美しさが常に求められました。ここでは、とりわけ美しく装飾された楽器や、漆工・染織などの工芸技術を駆使した箱・筒・袋等の収納具を展示します。

由緒を尊ぶ

有名な楽家や公家に代々伝えられた楽器は、格別の価値を有する名器として殊のほか大切にされました。楽器に附属する由来書・鑑定書の記述からは、治宝を中心とする人間関係が見え隠れし、当時の大名家を中心とした文化のありさまがうかがわれます。また、由緒ある古材や古い楽器を用いて楽器が作られることもありました。

写真資料

 

琵琶「花月」

 

笙「真具寿」

 

「真葛笙記」

 

七絃琴「冠古」

 

笙「山端」

 

龍笛・高麗笛 連管「金龍」

 

琵琶「白鳳」

 

箏「葉菊」

 

太鼓

 

枝垂桜葵紋蒔絵三管箱

   

連管「青海波」の筒

 

 

展示資料

紀州徳川家伝来楽器コレクションより

笙  銘「真具寿」  伝聖護院御物  鎌倉時代
笙  銘「山端」  元享元年(1321)
篳篥  銘「思月」  阿倍家旧蔵  鎌倉時代
龍笛  銘「青柳」  伝足利義満旧蔵・大神家伝来  鎌倉時代
龍笛  銘「蝉丸」  山井家伝来  江戸時代
連管  銘「金龍」  伝初代獅子田太郎作  江戸時代
高麗笛  銘「那々久佐」  豊家伝来  江戸時代
神楽笛  銘「千歳丸」  山井家・豊原家伝来  江戸時代
能管  銘「男女川」  伝森田休音旧蔵  江戸時代初期
一節切  銘「山風」  伝大森宗勳作  安土桃山〜江戸時代
銅簫  銘「含和」  後漢・建安3年(198)
調子笛  太秦広幾作ほか  江戸時代
琵琶  銘「白鳳」  伝嵯峨天皇寄進  天武6年(677)
琵琶  銘「花月」  一尾通尚作・徳川治宝画  江戸時代初期
箏  銘「葉菊」  後桜町院旧蔵・持明院家伝来  江戸時代
和琴  銘「大桐」  多家伝来  室町時代
七絃琴  銘「冠古」  『集古十種』所載
太鼓  神田喜一郎作  江戸時代後期
鞨鼓  江戸時代後期
壱鼓  江戸時代
枝垂桜葵紋蒔絵三管箱  江戸時代後期
紅地小葵梅丸文三管袋  江戸時代後
錦爪袋  江戸時代後期
『仁智要録』  藤原師長撰

(すべて国立歴史民俗博物館蔵)

※この他、各種楽器・附属品・附属文書などを含め、約90点を展示します