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第1回 第2回第3回

戦時・占領下の地震

北但馬・北丹後地震 展示風景
北但馬・北丹後地震 展示風景

- 関東大震災の後は、北但馬・北丹後地震が取り上げられていますね。

原山: はい。ここで重要なのは、関東大震災で経験した復興の方法が、形を変えてこの二つの震災に活かされていくことです。具体的には都市計画や区画整理、公共施設の建設などに反映されていきます。

- 東南海地震、南海地震、福井地震は戦時・占領下に起こった地震ですね。

原山: まずこれらの地震は、単純に規模だけを見ても非常に大きく重要な地震です。それに加えて、地域によっては戦災と震災が連続して起こっている点も見逃せません。例えば福井地震では、空襲によって半壊していた建物が地震によって完全に倒壊してしまうといった状況がありました。連続して被災したという事実それ自体が重みを持つと思います。

東南海・南海地震 展示風景
東南海・南海地震 展示風景

また、戦時・占領下という状況で起こったため、地震の規模のわりには広く認識されなかったことがあるでしょう。さらに、戦時下の地震がいかに隠蔽されていたかという問題があり、これは当時の新聞などを見ても明らかです。このことが、結果的に私たちの地震の認識に対して、大きな欠落を生むことになってしまいました。

また、東南海地震・南海地震は、周期的に発生すると言われている南海トラフの地震であることも注目していいと思います。

震災と救済

エピローグ 阪神・淡路大震災から考える 展示風景
エピローグ 阪神・淡路大震災から考える 展示風景

 展示全体に関わることですが、被災者の救済にはどのような課題があるのでしょうか。

原山: 救済の問題については、関東大震災のコーナーなどで取り上げています。大きな震災が起こる度に少しでも多くの人を救おうとさまざまな救済策が講じられますが、必ずそこからこぼれ落ちる人たちが出てきます。例えば、阪神・淡路大震災の時に問題になったのは、個人の住宅が倒壊した場合、当初は私有財産という理由で救済の対象になってはいませんでした。しかし、市民運動の力もあって支援の枠組みが作られていきました。

このように救済策は少しずつ改善されていくのですが、一方で新たな地震が起こった時には、また別の問題によって救済からこぼれ落ちる人たちが出てきます。つまり、救済の欠落の発見と改善がくり返されて行くわけです。救済はあるのだけれども常に足りない。特に近代以降はそのサイクルがずっと続いています。

今震災の歴史を見直すということ

 最後に、今後の課題についてお聞かせください。

原山: 震災というのは非常に難しいテーマだとあらためて思いました。震災が社会にどういうインパクトを与えたのかというマクロな視点。客観的なデータを基に被害の大きさを見ていく自然科学的な視点。具体的にどういった救済策がとられてきたのかという視点。それぞれの視点をどのように一つに結びつけていくのか、というのは非常に難しい問題であると感じました。

- はい。

原山: もう一つには、少しうがった見方かも知れませんが、震災で問題になることは、社会がもともと持っていた問題が顕在化したものなんですね。例えば原発の問題にしても、戦後の原子力行政から見つめ直さなければならない問題であって、それが東日本大震災を契機に私たちに突きつけられたわけです。

震災の歴史を見るということは、それぞれの社会が持っていた、あるいは今私たちの社会が抱えているさまざまな問題をもう一度考え直すことでもあります。答えは一つではなくて構いません。今回の企画展示をご覧になって、今目の前にある震災の問題を考え直すきっかけを一つでも見つけていただければと思います。

 本日はありがとうございました。