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開催概要展示構成関連の催し刊行物のご案内

開催概要

伝統の朝顔
開催期間1999年8月3日(火)〜9月5日(日)
 チラシ

「伝統の朝顔」への誘い

江戸時代の園芸文化の中で、ひときわ特異さをかもしてやまないのが朝顔文化です。江戸後期にもなると、それまでの庭園での園芸から鉢植えの園芸に主流が移り変わるとともに、丸咲きの原種に近い朝顔の中から、葉も花の形も変化に富んだ、いわゆる変化朝顔(変わり咲き朝顔)がつくり出され、育成されるようになりました。文化・文政期頃(西暦1820年代から1830年代)には第一のブームを迎え、武士から庶民まで広く親しまれるようになりました。嘉永・安政期頃(1840年代後半から1850年代)には再び大ブームを迎え、葉や花の形だけでなく色の組み合わせの多様性を追求することになりました。

江戸時代後期に花開いた朝顔文化の特異さは、朝顔がもっている形や色彩の多様性が注目されたことです。何分の一でしか出現しない出物と呼ばれる奇葉・奇花が競って育成されたのです。しかも、朝顔は種子でしか増やすことができない一年生の植物です。奇葉・奇花をつける変化朝顔は種子をつくらないので、親株の種子から変わり種を探しつづけなければなりません。1865年にメンデルが遺伝の法則を発表する前に、経験的に法則を心得ていたとしか思えません。変化朝顔のほか、大きさを競う大輪の朝顔も育成され、明治・大正時代以降、親しまれるようになりました。

くらしの植物苑特別企画『伝統の朝顔』展は、世界でも類例を見ない特異な朝顔文化を、生きた植物と江戸時代の図譜や浮世絵などの歴史資料の両方からとらえなおそうとするものです。生きた朝顔は、国立の機関や各地の同好者によって保存されてきた系統を、種子から育成したものです。朝顔の観賞は、発芽時の子葉、本葉、そして花と、三度にわたって行われてきました。多くの方々に、花だけでなく葉も楽しんでいただけるよう、通常よりはるかに長い開催期間を設定しました。

会場 国立歴史民俗博物館くらしの植物苑・本館第3展示室
入苑料 (くらしの植物苑) 
個人(小学生以上) 100円 /団体(20人以上) 50円
入館料

(本館・企画展示室)
一般 個人420円 団体350円 /高校・大学生 個人250円 団体200円 
小・中学生 個人110円 団体90円 

*第2,第4土曜日は小・中学生,高校生は入苑、入館料とも無料(常設展示のみ)

開館・開苑
時間
9:30〜16:30(入館・入苑は16:00)
主催 国立歴史民俗博物館

パンフレットイメージ(クリックで拡大)

最近咲いた朝顔

青桔梗葉水色桔梗咲八重(8?BF$B7n31?$|) 青糸柳葉藤紫色采咲牡丹(9月7日) 青糸柳極淡藤色撫子采咲(9月7日)

過去の朝顔

系統番号524 青縮緬立田尾長雨竜葉青鼠車咲 7月22日 系統番号506 黄尾長立田葉紅筒白切咲 7月28日 系統番号597 青渦蝙蝠南天葉淡青地藤紫吹雪筒八重咲 7月22日 系統番号114 黄蝉葉栗茶筒白丸咲大輪 7月28日 系統401 黄掬水爪竜葉淡紫地紫車絞風鈴獅子咲牡丹(8月4日)
系統524 青縮緬立田尾長雨竜葉青鼠車咲(8月4日) 黄爪竜葉風鈴獅子咲牡丹(8月6日) 黄縮緬葉瑠璃色総鳥甲吹上台咲牡丹(8月7日) 青笹葉淡桃切咲牡丹(8月6日) 黄渦丸葉紅牡丹(8月6日)
青渦柳葉江戸紫采咲牡丹(8月5日) 青笹葉淡桃切咲牡丹(8月6日) 黄桔梗渦枝垂淡紅細覆輪桔梗咲(8月24日) 青爪竜葉瑠璃色筒白総風鈴獅子咲牡丹(8月24日) 青斑入渦蜻蛉葉白地赤吹掛絞星咲(8月24日)
青笹柳葉采咲牡丹(8月24日) 曜白朝顔(8月31日) 青南天葉藤紫牡丹(8月31日) 青水晶斑入林風孔雀葉石化茎白切咲(8月31日) 青渦葉鮮紅色丸咲(8月31日)

展示構成

本館・第三展示室より ―意匠としての朝顔―

日本の絵画・工芸のモティーフは、平安からの伝統をもつものと、近世になってがぜん人気を得る比較的新しいものとに大別できるが、朝顔は明らかに後者の方である。朝顔のひなびた野性的な雰囲気が、室町以前の美術に馴染まなかったのかもしれない。

しかし、ひと夏を限りの命と蔓を伸ばす生命力あふれる姿は、やがて新時代の息吹を伝える小袖や蒔絵の文様、障壁画の画題に登場するようになる。デザイン性の高い近世の意匠にとって、画面を自在に埋めることのできる柔軟な形の蔓草は格好の素材でもあった。文化・文政の朝顔ブームをまつまでもなく、桃山から江戸時代の初めにかけて、意匠としての朝顔は確固たる地位を確立したのである。

花樹草花蒔絵螺鈿洋櫃
(国立歴史民俗博物館所蔵)
桃山時代、ポルトガルとの交易を通じてヨーロッパ向けに輸出されたいわゆる南蛮漆器のひとつである。描かれたモティーフは日本の伝統的な植物ばかりであるが、蒲鉾形の形態や余白の少ない文様構成に、輸出品ならではの特徴がみられる。これらの漆器の背面には、蔦や葛など蔓草が描かれることが多い。この櫃は後世に蝶番の金具を取り払ってしまったものだが、本来裏側であった部分に、やはり蔓を伸ばす朝顔が描かれている。

一節切(ひとよぎり)
銘「紫鸞」(紀州徳川家伝来)および袋
(国立歴史民俗博物館所蔵)
紀州徳川家十代治寶(はるとみ 1770-1853)によって蒐集された雅楽器のひとつ。一節切は尺八の一種で、節をひとつ含むことからこの名がある。丸に「是」字の焼印から原是斎(はらぜさい 1580-1669)の作と知られるが、銘は極めによれば近衛家煕(このえいえひろ 1667-1736)筆という。金蒔絵と鎹留めによる補修は、この笛の由緒をうかがわせる。袋のひとつは、ビロード地にアップリケと刺繍で朝顔(裏は網干に千鳥)を表した愛らしいもので、治寶の時代に調えられたものであろう。
紅縮緬地朝顔模様絞染小袖(小袖屏風)
江戸後期(国立歴史民俗博物館所蔵)
紅の縮緬地に群生した朝顔をあらわした小袖。現在は二曲一隻の屏風に貼装されている。絞り染と糊防染に上絵を施して図様を整えているが、一度染めてから脱色する抜染の使用を指摘する向きもある。個々の花や葉は単純素朴な味わいで江戸中期に流行した光琳模様風であるが、作期は江戸後期とするのが妥当であろう。当代の朝顔をモチーフとした小袖としては、つとに知られた優品である。屏風装とされる以前は五枚の小袖裂の状態であり、そのうちの一枚は川越の遠山記念館に収蔵されている。

浮世絵にみる朝顔

朝顔を題材とする浮世絵は少なくない。喜多川歌麿の「娘日時計 辰の刻」、歌川国芳の「加賀千代女」などのように、夏の朝の涼を演出する植物として描かれたが、変化朝顔を意識して描かれたものは意外に少ない。ここでは、当館蔵の浮世絵の中からいくつか朝顔が描かれているものを撰んでみた。

三代歌川豊国
今様三十二相・よねんなさ相
大判錦絵 山口屋藤兵衛 安政6(1859)年6月改
仏が備えるすぐれた身体的特徴である三十二相を、美人の諸相を描く名数として使うことは浮世絵ではよく見られる。三代豊国の「今様三十二相」は安政6年から文久元年にかけて制作されたシリーズで、豊国の描く美人大首絵に、幕末のデザイナーとでもいうべき梅素亭玄魚がコマ絵を添えている。本体の美人画とコマ絵とは密接な関連を持つものと思われるが、現在のわたしたちには十分な解釈ができないものも少なくない。本図も、摘み取った朝顔の花を重ねることに「余念無さそう」な美人を描いているが、コマ絵の朝顔の蔓が巻き付いた垣に掛けられた「喜代賀幾」との関係はよくわからない。摘み取った朝顔の花を重ねることは、当時よく行われたようで、その状態で水盤や茶碗に活けた様子が、北斎一派の肉筆画や摺物に見いだすことができるだけでなく、明治になってからも、しばしばこうした様子が描かれている。
豊原国周 花揃美人くらべ
大判錦絵3枚続 政田屋平吉版 明治初期
幕末から明治にかけて3枚続きの形式の美人大首絵が流行するが、本図はそうしたものの一つか。右から「かつさや(上総屋)小せい」「むさしや小濱」「かしハや小菊」と読める。右は「曜白(ようじろ)」と呼ばれた系統で、真ん中は芙蓉である。

展示の概要

  1. くらしの植物苑

    くらしの植物苑で栽培・育種した鉢植えの伝統朝顔 約300鉢 変化朝顔:温室で展示。主要な系統については「出物」・「親木」を対照させて展示。 大輪朝顔・肥後朝顔:苑内のあずま屋で展示。

  2. 本館第3展示室

    江戸時代に刊行された変化朝顔の図譜や、朝顔がえがかれた芝居道具・浮世絵,意匠として朝顔がもちいられた絵画・工芸品,江戸時代の遺跡から発掘された植木鉢などを展示。

「伝統の朝顔」と準備状況

九州大学理学部,細胞遺伝学研究室で冷蔵庫に保存されている伝統朝顔の種子。

5月31日 展示する朝顔の芽生え。双葉(子葉)が開いた頃。双葉の形で出物系の出物と親木のちがいがたいてい分かります。

6月22日 様々な形の本葉をだした朝顔。出物系の朝顔は変化に富んでいます。

本鉢に移植した出物系統の変化朝顔、左上の一鉢が親木で他は出物

原種系の朝顔。中国から日本に渡来した頃はこんな姿だったと思われる。北京天壇。花は早咲きで、咲いた花がしおれるのも非常に早い。九州大学・仁田坂氏撮影。

青海松葉本紅筒白采咲牡丹。海松(みる)葉とは糸柳が分岐した葉のことを言う。紅と花筒の白のコントラストが美しい。九州大学・仁田坂氏撮影。

くらしの植物苑で咲き始めた肥後朝顔

温室での作業風景 7月22日

朝顔の写真コンテスト

応募要項

展示されている朝顔を撮影した写真を募集します。
植物苑のあずま屋では三脚が使用できます。(温室では終日三脚使用禁止です)
応募要項は下記の通りです。

応募期間 1999年8月3日(火)から1999年9月6日(月)(消印有効)まで。
応募作品 キャビネ判ないし六切で一人3点まで。
賞品 入賞作品20点を選定し,エントランスホールに掲出し,記念品を贈呈します。
応募先 106-0031
港区西麻布4-11-28-901
「伝統の朝顔」広報事務局 朝顔写真募集係
備考 *応募作品は返却致しません。
*作品の版権は主催者(国立歴史民俗博物館)に帰属します。
*写真の裏に別紙で撮影月日、住所,氏名,電話番号、年齢、職業(学校名)を明記し貼付してください。

朝顔の種子プレゼント

この企画は開催期間中,毎日(休苑日を除く)先着50名の皆様に変化朝顔の種子をプレゼントするものです。

種子は九州大学で保存されていたもので、市販されることのない大変貴重なものです。

全部で種類は21系統。1日1系統限定で1名の方に,正木系で3〜5粒,出物系で5〜10粒を栽培・育成の説明書をつけてプレゼントします。

刊行物のご案内

刊行物

図録『伝統の朝顔』

総カラーページで、第?部「伝統の朝顔」と第?部「資料にみる朝顔」からなります。第?部では原種系の朝顔、文化・文政期の朝顔、嘉永・安政期の朝顔、現代の変化朝顔、現代の大輪朝顔、現代の肥後朝顔の順にアサガオの種類と系統が図・写真でもり込まれています。第?部は朝顔書の世界、朝顔を"競う"、朝顔を"育てる"、芝居に見る朝顔、浮世絵にみる朝顔、意匠にみる朝顔の順で歴史資料、歌舞伎、浮世絵、絵画、工芸品のなかで描かれた朝顔が紹介されています。

くらしの植物苑関係の図録・絵葉書等の刊行物についてのお問い合わせ
財団法人 歴史民俗博物館振興会
電話:043-486-8011(9時30分から17時00分まで) / E-mail:shop@rekishin.or.jp