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開催概要展示構成準備状況

開催概要

伝統の朝顔
開催期間2003年8月12日(火)~9月中旬

朝顔がもっているたくさんの突然変異の遺伝子を見つけ出し,変化朝顔というおびただしい数の系統群をつくりあげた江戸時代後期の朝顔の園芸文化は世界で も特異であり,その後の明治・大正・昭和の文化にも大きな影響を与えながら受け継がれてきました。中世以降,日本は世界の園芸のセンターの一つとなりまし たが,朝顔はその中核的な植物でもありました。したがって,その実体を浮き彫りにすることは,生活文化の特質や技術史を理解することになります。

国立歴史民俗博物館は,1999年以降,辛うじて維持されてきた江戸時代以降の朝顔の系統を収集し,毎年,くらしの植物苑特別企画として「伝統の朝顔」 の展示を開催してきました。今,いくつかの遺伝学研究室を除くと,国立歴史民俗博物館は系統を収集・維持していく唯一の博物館となっており,上記のような 日本文化とその歴史の理解を促すという意味で,継続的な展示が求められています。

今年度は,これまでの収集・維持系統を総括し,江戸時代後期から今日までのブームの中心になった系統群の歴史的な流れに重点を置いて,江戸時代後期以降 の正木系統と出物系統,明治・大正以降の正木の1系統群である大輪朝顔を展示します。また,同時代の西欧での流れを対比するために,主としてヨーロッパで 栽培されてきたアサガオ近縁種もあわせて展示します。

会場 国立歴史民俗博物館 くらしの植物苑
料金 通常
開苑時間 9時30分~16時30分 (入苑は16時まで)
主催 国立歴史民俗博物館
展示物イメージ

過去の展示

展示構成

展示する系統は,くらしの植物苑で育成した以下の系統群。

  • 正木系統 35系統
  • 出物系統 12系統
  • 大輪朝顔 約50系統(発芽・生育状況によって選別)
  • 西欧朝顔 7系統

展示系統は日本の伝統朝顔についてはすべて鉢植えとします。正木系統・大輪朝顔と出物系統を2つの温室に分けて展示,主要なものをあづまやに展 示。朝顔は一日ごとに開花状況が変化するので,午前7時から9時までの状況を見て,毎日,展示する鉢を交換。

西欧の朝顔については,すべての系統を大鉢に植え込んだものをあづまやの前の広場で展示します。

展示の解説

変化朝顔の多様な系統

図1:さまざまな葉の変異

さまざまな葉の変異

図2:さまざまな花の変異

さまざまな花の変異

準備状況

種子の保管 9月10日

そろそろ夏一番に開いた花の果実が熟す頃です。基本的に種子は果実の皮が茶色になってパリッとなったころに採取します。株ごとに 茶封筒などの紙袋を用意し花銘を記入、袋のまま日陰で自然乾燥させ、フリーザーバックやタッパーウェアなどにシリカゲルと一緒にいれ、冷蔵庫で保存しま す。正木系統のアサガオはそのまま保存できますが、出物系統は親木として残したすべての株が同じ形質を受け継いでいるとは限らないので、この時期の短日と 気温を利用してそれぞれテスト播きをしてから保存しています。もし、このときに形質をきちんと受け継いでいることが確認できない場合は、その親木の株は保 存しません。(もし保存する場合は系統番号をとり、花銘を変えなくてはなりません。)

渦小人 9月3日

青渦豆葉小人紅丸咲

統番号<837>
青渦豆葉小人紅丸咲

戦後、渦系統から出現した新しい変異です。出物の葉は「渦」よりもさらに詰まって硬く、色も濃くてサボテンのようになります。成 長がひじょうに遅いため、成長しても15cmくらいにしかなりません。子葉軸が短く、地面すれすれに発芽しますので、ときには地面に出てこられないことも あります。今年、歴博では1株しか出ませんでした。会期後半になってやっと花を咲かせました。小さな葉のかげに小さなつぼみがかくれています。次々と咲い ていきますので、ぜひご覧下さい。

度咲(どざき) 8月27日

石化

系統番号<636>
牡丹出物:
青渦柳葉江戸紫采咲牡丹

江戸の図譜の花銘(花の名)に「度咲」、「二度」と書かれていることがあり、このように書かれた部分の手前には牡丹という文字を みることができます(図録「伝統の朝顔?」p18~27 -嘉永・安政期の朝顔- 参照)。出物系統・牡丹出物の牡丹咲は、雄しべと雌しべが花弁とガクにくりかえし変化し、つぼみが幾重にも重なった複雑な構造をしています。実際に咲いて いる花をのぞいてみると、変化した花のなかに小さなつぼみがあがっているのをみることもできます。'前日に咲いた花の中のつぼみがもう一度咲く'二度咲き ということから略して度咲または二度と表現されています。江戸の人々の鋭い観察眼には本当に驚かされます。
度咲は、暑いときは中のつぼみがだれてしまいますので、涼しいほうがよくみられるようです。写真中央の2花のうち、上は撮影当日に咲いたもので中につぼ みをみることができます。下は中のつぼみも開いた状態で、外側の花弁と内側の花弁の色が違っているのがわかります。

枝変り 8月20日

写真aは、系統番号603の糸柳系統の枝変りです。通常、出物は糸柳葉で花は細切采咲牡丹(写真b)、親木は蜻蛉笹葉で切咲(写真c)です。写真 aの左側下に咲いている花は、出物の花(前日に咲いたもの)、上部に2花さいているものは、親牡丹の花で、両者を同時に見ることができます。

枝変り 出物 親木
a:枝変り b:出物
注:花はまだ咲いていません
c:親木

「伝統のアサガオ」展オープン 8月12日

今年で5年目をむかえる、くらしの植物苑特別企画・季節の伝統植物「伝統のアサガオ」がオープンしました。今年は、日照が少なく、気温もあまり上 がらなかったのですが、正木・出物ともに咲きそろい、華々しいスタートを飾ることができました。初日は、辻誠一郎展示プロジェクト代表のあいさつと解説会 が行われ、報道の方々も集まりました。昨年とおなじように、東屋とそのまえの広場、2つの温室を使用し、展示をおこないます。今年初めて歴博で栽培、展示 する系統も数多くあります。出物系統は花期が若干遅くなりますので、ぜひ何度でも足を運んでみてください。なお、開期中は9:30~11:00ごろまで ギャラリートークを行っています。

入口 解説会・来館者 展示風景
a:入口 b:解説会・来館者 c:展示風景

花の変異「切れる」 8月6日

野生型の葉が3裂しているのに対して、5裂しモミジの葉のようになっている葉の状態を、紅葉の名所・立田川にちなんで「立田」とよんでいます。こ の変異をもっている花は、花びらの幅が広い「切咲」となります(a)。アサガオの花は通常丸咲ですが、曜とよばれる栄養脈が5本あり、5枚の花びらが合着 して丸咲になっていることがよくわかります。また、「柳」という変異をもつと、葉が柳の葉のように細長くなり、花びらも細く切れたものになります(b)。 これを「采咲」といい、武将がもつ采配にみたててこの名があります。

正木系統<506> 出物系統・一重出物<636>
a:正木系統<506> b:出物系統 ・ 一重出物 <636>

葉の変異「抱える」 7月30日

葉がしおれたように握ったり、葉巻のようにくるくる丸まったりしています。これは、水が足らないのでは なく、'抱える'という性質をもっているからなのです。抱える葉は大きく2通りあります。「南天」という性質をもつ系統(写真a・b)は、葉の表面を外側 にして巻いています。一方、「獅子」という性質をもつ系統(写真c・d)は、爪龍葉といって、絵画にでてくる龍が玉を握っている爪の形をしており、葉の表 面を内側に巻いているので裏の葉脈が目立ちます。

青南天葉淡藤紫南天筒咲 青渦蝙蝠南天葉青淡地藤紫吹雪筒咲八重 青握爪龍葉桃色切弁獅子咲牡丹 青握爪龍葉瑠璃色総風鈴獅子咲
a:<627> 出物系統[親木]:青南天葉淡藤紫南天筒咲 b:<597> 正木系統:青渦蝙蝠南天葉青淡地藤紫吹雪筒咲八重 c:<438> 出物系統[牡丹出物]:青握爪龍葉桃色切弁獅子咲牡丹 d:<426.1>出物系統[一重出物]:青握爪龍葉瑠璃色総風鈴獅子咲

茎の変異「帯化」 7月23日

石化

石化 <系統番号932>

茎がリボン(帯)状になるので「平軸」、植物学では「帯化(たいか)」とよばれています。これは、茎の先端にある成長点が、通常 はひとつしかないのに対し、突然変異によって線状に複数形成されるためにおこるもので、園芸では「石化(せっか)」とも言われています。石化は特殊な遺伝 をするため、観賞価値の高い見事なものは、なかなかでることがありません。帯化系統の基本となる葉は孔雀の性質をもつ孔雀葉で丸咲ですが、立田変異が入っ た系統は切咲となります。アサガオは茎や葉のふちに花の色素がでてくるため、写真ではすこし紫がかっています。先端にはつぼみが一斉についており、各成長 点が同時に成長したことがわかります。

葉の変異「松島」 7月16日

松島

松島 <系統番号1076>

アサガオには通常よく見られる「青葉」と、黄緑色をした「黄葉」という2種類の葉があり、これにそれぞれ斑がはいる斑入りがあり ます。また、写真のように1枚の葉のなかで青葉と黄葉に分かれている「松島」という変異があり、こちらは黄葉に青葉の斑が入っています。咲分ける品種で、 トランスポゾンの影響で花の色素アントシアニンが壊され白花が咲きますが、トランスポゾンが何らかの理由でなくなって色素を作れるようになり、時雨絞(雀 斑)という1つの花の中に縞や点ができるものや、ときによっては半分ずつきれいに咲分けるものもあらわれます。日々、違った花が咲きますので、楽しみにし てください。

本鉢上げ 7月9日

いま温室の中では、すくすくと育ったアサガオの9cmポットから5号鉢への「本鉢上げ」が行われています。展示の期間に多くの花が見られるよう に、播種期を少しずらして育てています。出物系統は親木と出物のそれぞれの牡丹探りが終わったものから順に、正木系統も遺伝子の有無を葉や茎で確認したも のから順に本鉢へ植えていきます。鉢は毎秋に手入れをしてからしまいますが、植える前には病気がでないように、もう一度よく洗い乾燥させたものを用いま す。つる植物ですので、行灯やらせんをつかって仕立てていきます。

アサガオ温室 本鉢上げ
アサガオ温室 本鉢上げ

冬越しのアサガオ 7月2日

昨年秋にテスト撒きをしたアサガオです。本来ならば、短日のうちに成長しつぼみをつけた各株は、それぞれ双葉の形や茎の色、本葉の色や形、花色、 牡丹が出るかどうかなど多岐にわたって遺伝子が正しく保存されていることを調べたあとは、屋外なら冬がきて枯れてしまうか、屋内でも温度を保つのが難しく やはり枯れてしまうのですが、今回は二重温室の中で温度を保ち、冬を越させてみました。東屋正面に展示してありますので、ぜひご覧下さい。

412の試し撒き 627の試し撒き
<系統番号412>
左:親木 右:出物
<系統番号627>
左:親木 右:出物