くらしの植物苑観察会

毎月第4土曜日(4月はみどりの日)
13:30に苑内のあずまやに集合
15:30頃までの予定、苑内の季節の植物も観察

  • 10月23日 第79回観察会「菊と紋様」 日高薫(歴博)
  • 11月27日 第80回観察会「酒と民俗」 青木隆浩(歴博)
  • 12月25日 第81回観察会「冬至とクリスマス」 安室知(歴博)

菊と紋様

  • 執筆者:日高 薫
  • 公開日:2004年10月22日

キクは、サクラとともに日本を代表する花のように考えられていますが、もとは中国からもたらされた渡来植物でした。 しかし、キクがいかに日本人の生活文化に深く根付き、愛され続けた植物であるかは、古くから文学や美術の主題に繰り返しとりあげられてきたことからも明ら かです。とくに身の回りの様々なものを美しく彩る装飾文様に、キクのモティーフは欠かせないものでした。

キクが文様に好んで描かれたのには理由があります。

本来、薬用植物として育てられたキクには、長寿をもたらす効能があると信じられ、不老長寿のシンボルとみなされていたのです。中国から植物とともにもた らされたこのような思想は、唐風の文化を尊重した貴族のあいだに広まり、重陽の節句の宮廷行事や菊水伝説として定着していきました。キクが数ある花のモ ティーフの中でとりわけ好まれたのは、不老不死をあらわす吉祥の意匠として晴れの調度を飾る文様にふさわしかったからなのです。
キクにはまた、太陽が輝くような均整のとれた花形から、高貴な花としてのイメージもあります。皇室の菊の御紋章に代表されるように、支配者階級との関わ りが深い特権的な文様であったことも、菊文様の発展に大きく寄与しました。

さて、各時代の菊文様をたどっていくと、パターン化された文様表現にも、少しずつ変化が見られることがわかります。単弁のシンプルな花形(平安時代から 鎌倉時代)から、重弁の豪華な花形(室町時代)へ、そして変化に富む様々な花形(江戸時代)への変化は、数度にわたって新たな品種が日本に持ち込まれた り、園芸文化の隆盛を背景に国内で品種改良が行われたりした結果を反映していると思われます。 

紅地菊水模様縫箔 部分