くらしの植物苑観察会

毎月第4土曜日(4月はみどりの日)
13:30に苑内のあずまやに集合
15:30頃までの予定、苑内の季節の植物も観察

  • 5月22日 第74回観察会「漆」 永嶋正春(歴博) 
  • 6月26日 第75回観察会「夏至と半夏生」 辻誠一郎(東大)
  • 7月24日 第76回観察会「メロンの世界-日本のメロンは弥生から」 藤下典之(前大阪府立大学) 

漆 -漆とは-

  • 執筆者:永嶋 正春
  • 公開日:2004年5月21日

漆とはウルシ科植物が分泌する天然樹脂です。ウルシ科植物は、70以上の属、600以上の種からなりますが、漆(漆液)を 多く分泌するのは4~5種。この内、中国・朝鮮半島・日本の漆は、同一種である'ウルシ'の木の樹液を使用し、東南アジアではハゼノキの一種から採れる' 安南ウルシ'などを利用しています。ヤマウルシ、ツタウルシ、ハゼノキなどの漆液は、その品質の悪さや分泌量が極めて微量であることなどから使用できませ ん。漆を高度に利用する漆技術・漆文化は、東アジア地域に固有のもので、その発生と伝播については、常に関心が持たれています。漆液の主成分はウルシオー ル(多価フェノール)で、他に水分、ゴム質などを含み、常温ではラッカーゼという酵素の働きで固化します。良質な漆液の分泌は夏季を中心とする数ヶ月間に 限られ、その硬化には空気中の酸素と適度な高温多湿環境が必要です。したがって縄文・弥生時代の漆文化は、季節性の高い文化と考えることができます

ウルシの木は陽樹であり、肥沃で適度な水はけ、風通しのよい場所を好みます。一時に採取できる漆液の量はきわめて僅かであり、しかも時間の経過とともに固化し てしまいます。したがって、漆技術・漆文化の成立には、ウルシの木の集約的栽培管理が必要となります。漆製品製作の観点からみても、長期的な計画性が必要 でしょう。ウルシの木から採取したままの漆液は水分が多く、主に接着剤や下地用に使用されます。この漆を生漆と呼びます。生漆を天日や熱でクロメ(黒目) ることにより水分量を3%程に減らし、塗料としての質を改善します。このクロメ漆は、ナヤシ(撹拌による成分の均質化)がかかることでも、良質化します。 漆文化は、これら漆の性質に依拠して成立しています。