くらしの植物苑観察会

毎月第4土曜日(4月はみどりの日)
13:30に苑内のあずまやに集合
15:30頃までの予定、苑内の季節の植物も観察

  • 3月27日 第72回観察会「桜と花見」 岩淵令治(歴博・歴史研究部)
  • 4月29日 第73回観察会「日本の花文化」 新谷尚紀(歴博)
    *みどりの日は入苑が無料 

4月20日(火)~5月9日(日)季節の伝統植物『伝統のサクラソウ』展開催

日本の季節と華花 くらしの植物苑観察会への誘い

  • 執筆者:辻 誠一郎
  • 公開日:2004年2月24日

春の季語に「山笑う」というのがあります。同じく「冴え返る」というのもあります。木々の芽吹きが始まり、山全体が躍動感 に満ちているのを山が笑うと表現したのです。これは北宋の山水画家郭煕(かくき) の「春山淡冶にして笑うが如し」という記述に由来しています。自然を動的に捉えようとしていることがわかります。それが笑うという擬人的な表現となったの でしょう。山が笑い始め、しだいに活気が出てくるころ、身に沁みるのは寒の戻りという現象です。大陸側から移動性の高気圧が南下してきて、一時的に冬の気 圧配置となり、放射冷却によっていっそう冷やされるというのが寒の戻りです。これは春から初夏にかけて何度も日本を訪れ、日本列島ならではの季節感をもた らしています。「冴え返る」とはこの季節感をみごとに表現したものと言えるでしょう。
海に囲まれた日本列島では、気温の変化とともに雨や雪の降り方の変化が重なって、変化に富んだ景観をつくり、多様な植物を育んできました。それはまた、 人々の日常経験の中に溶け込み、独特の季節表現や季節感が蓄積されてきました。たとえば「冴えかえり冴えかえりつつ春なかば」(西山泊雲)ということば表 現にみごとに結実しています。同じような季節の繰り返しなのに、遠い古代から現代まで、連綿と培われ、蓄積されてきた季節表現と季節感は、そう易々と失わ れてはならないものでしょう。
国立歴史民俗博物館のくらしの植物苑では、毎月第4土曜日に観察会を開催してきました。この3月で72回になるので、もう6年間も続いてきたことになり ます。観察会では、始めのころはテーマを設けてその時々の季節の植物を見て回ることが主でしたが、しだいに、いろいろな分野の方々に日本の植物文化史を 語っていただくようになりました。単に植物を食べ物や鑑賞の対象としてだけみるのではなく、歴史をとおして蓄積されてきた季節感をいつも確かめてきたよう に思います。一年のさまざまな行事や農事、あるいは日本独自の花文化をテーマに取り上げてきたのはそのためでした。6年が経っても、まだ話題は尽きませ ん。というより、果てし無く広がっていくように思います。それほどに歴史というものは奥深いということかも知れません。
4月から新しい年度になり、1年の新しい観察会のプログラムもできています。今年は7月13日~9月12日、縄文時代から現代まで、日本にわたってきた 植物の歴史とかかわりを展示する企画展示『海をわたった華花-ヒョウタンからアサガオまで』を開催しますので、関連するテーマもたくさんあります。4月 29日のみどりの日、前館長であった故佐原さんが始められた「日本の花文化」で年度の幕開けとなります。