くらしの植物苑観察会

毎月第4土曜日(4月はみどりの日)
13:30に苑内のあずまやに集合
15:30頃までの予定、苑内の季節の植物も観察

  • 1月24日 第70回観察会「新年の植物」安室 知(歴博・民俗研究部)
  • 2月28日 第71回観察会「早春の彩り」 辻誠一郎(歴博・歴史研究部) 
  • 3月27日 第72回観察会「桜と花見」 岩淵令治(歴博・歴史研究部)
  • 4月29日 第73回観察会「日本の花文化」 新谷尚紀(歴博)
    ☆みどりの日は、講演のほかに、花のうたを集めた華花コンサートもあります。

めでたい植物の話-センリョウ・マンリョウの仲間たち

  • 執筆者:辻 誠一郎
  • 公開日:2004年1月24日

庭木として好んで植えられる木に、センリョウとマンリョウがあります。どちらも、冬でも深い緑の葉をつけた常緑の木で、 しかも果実が真っ赤になるからです。アオキやナンテン、あるいはクロガネモチも冬に真っ赤な実を付けるので、同じように珍重されてきました。北半球の中緯 度に位置する日本や中国では、太陽や新しい生命を象徴する赤や黄、そして植物の生命観を象徴する青(すなわち緑)が尊重され、冬至から立春にかけて、新し い年のおとずれを祝ったり、豊作・豊穣を祈願するのに、常緑や赤い実を付けた植物たちに、その気持ちを託してきたのです。

センリョウとマンリョウは、どちらも関東地方以西の温かい地域に自然分布しています。けっして大きな木にはなりませんが、常緑で赤い実を付けるのが大き な特徴です。二つの植物の姿形はよく似ていますが、センリョウはセンリョウ科に、マンリョウはヤブコウジ科というグループに属していて、類縁性はあまりあ りません。それでも庭にいっしょに植えられるのは、新年のお祝いや豊作を予祝するのに相応しい、めでたい植物だからです。センリョウが千両、マンリョウが 万両と漢字で書かれ、縁起のよい名前が当てられていることからも理解できます。

ところで、マンリョウはヤブコウジ科の中のヤブコウジ属という小さなグループに属しています。このグループには、ヤブコウジやカラタチバナという植物も 属していて、マンリョウとはきわめて近縁の間柄にあるのです。ヤブコウジは、樹木とはいっても、地上を茎が匍匐し、背丈は十数センチしかないという目立た ない植物ですが、マンリョウと同じように常緑で赤い実を付けます。この植物は、暖温帯という温かい気候下の植物社会を特徴づける重要な要素で、ヤブコウジ をもっている植物社会をヤブコウジ群団と呼んでいるほどです。また、カラタチバナも常緑樹林の特徴的な樹木です。ヤブコウジ、カラタチバナ、マンリョウと くれば、忘れてならないことがあります。それは、江戸時代に隆盛した古典園芸の中で重要な位置を占めていたということです。庭木としてもてはやされたこと は言うまでもありませんが、鉢植え物としても流行し、とりわけ斑入り植物の代表として、園芸の世界に君臨していたのです。斑の入り方や斑の色など、江戸園 芸ならではのたくさんの変異が見つけ出され、また、改良が加えられたのです。

新年を祝う正月に、常緑で赤い実を付けるという性質をもっていたために、そして、日本の植生を特徴づける植物であったために、センリョウやマンリョウの 仲間は、人の生活と密接な関係をもちえたといえるかも知れません。