くらしの植物苑観察会

毎月第4土曜日(4月はみどりの日)
13:30に苑内のあずまやに集合
15:00頃までの予定、苑内の季節の植物も観察

  • 8月23日 第65回観察会「変化アサガオの世界」 仁田坂 英二(九州大学)
  • 8月12日(火)~8月31日(日) くらしの植物苑特別企画『伝統のアサガオ』展
  • 9月27日 第66回観察会「ドングリの世界」 上野 祥史(歴博)
  • 10月25日 第67回観察会「菊とサザンカ」 箱田 直紀(恵泉女学園大学)
  • 11月22日 第68回観察会「油の採れる植物」 辻 誠一郎(歴博)

アサガオ-古代、海をわたって日本に渡来

  • 執筆者:辻 誠一郎
  • 公開日:2003年8月18日

1999年にくらしの植物苑特別企画『伝統のアサガオ』を始めてから、今年で5年目になりました。くらしの植物苑で初め て「変化アサガオ」に接した方々は、こんなアサガオがあるとは思ってもみなかった、これがアサガオとはとても思えない、江戸時代にこんなアサガオを作りだ した文化があったなんて全く知らなかった、など、口々に感激のことばを残していかれます。展示を始めた私も、何を隠そう、1999年までは「変化アサガ オ」という世界を知りませんでした。日本の歴史が、文化が、うまく後世に伝えられていないのではないかと、ふと心配をしたものでした。

さて、アサガオは、英語では「ジャパニーズ・モーニング・グローリー」と言います。きっと、西洋の人々には、朝顔を見て残暑きびしい朝を涼んだ日本人の 光景が焼きついていたのでしょう。これだけからだと、アサガオはいかにも日本固有の植物のように思われます。実はそうではなく、江戸時代よりはるか以前の 古代、奈良時代に中国から薬用に日本に伝えられたとされています。当時、中国からは律令制という政治体制とともにさまざまな文化要素や生活様式、それらと 関連する植物もいっしょに日本に伝えられていました。日本を代表する花と言えば、すぐにキク(菊)が浮かんできますが、そのキクも同じ頃、中国から不老長 生の妙薬として、また、観賞用として、中国から日本に伝えられたものだったのです。中国や周辺域から伝えられたものが、その後、独特の植物へのかかわり方 によって、日本固有の園芸植物になっていったものは決して少なくないのです。

遺伝学の研究者というより、アサガオの顔と呼びたいほどの人がいます。九州大学の仁田坂英二さん、8月の観察会の講師です。今もアサガオを材料に活発な 研究活動を続けています。仁田坂さんはDNAの解析から、日本のアサガオが中国の「北京天壇(ぺきんてんだん)」という系統に一番近いことを明らかにしま した。日本に伝わったアサガオは、北京で採集された北京天壇やネパールの系統と同じく、青色の花と並葉を付け、「東京古型標準型」と呼ばれるものに近いと 考えられてきました。仁田坂さんは、遺伝子の塩基配列を使って解析をこころみ、日本を含めアジアのアサガオの間に塩基置換が認められないことから、起源が 同じであることをつきとめました。さらに、遺伝にかかわる総体、すなわちゲノム全体の変異を調べるゲノム解析法を用いて、世界各地に残る野生の系統と日本 のアサガオとの関係を調べたのです。その結果、北京で採集されたものに一番近いことが分かったのです。これで、中国から日本へ伝えられたことが科学的に裏 付けられました。

花びらが数十枚になる「牡丹」の変異など、どうしてそんなことが起こるのか、仁田坂さんはその謎解きを熱弁してくれるに違いありません。

古代に日本に入ってきた系統にもっとも近いと考えられる「東京古型標準型」と名付けられた朝顔