くらしの植物苑観察会

毎月第4土曜日(4月はみどりの日)
13:30に苑内のあずまやに集合
15:00頃までの予定、苑内の季節の植物も観察

  • 4月29日(火) 第61回観察会「日本の花文化」 辻 誠一郎(歴博)
    (29日のみどりの日はくらしの植物苑の入苑が無料になります)
    また、特別企画『季節の伝統植物:春・伝統のサクラソウ』が5月5日まで開催
  • 5月24日 第62回観察会「農事と植物」
  • 6月28日 第63回観察会「梅雨とアジサイ」

植物の名前 学名の話

  • 執筆者:辻 誠一郎
  • 公開日:2003年4月24日

くらしの植物苑に植わっている樹木の名札を見てください。すべてではありませんが、新しい名札が付けられています。名札 の中央には植物の種名の日本語名(普通名といいます)とラテン語の学名が記されています。左上には大きなグループ名である科の学名が、右上には科・属の普 通名が付記されています。ややこしいなあ、と思われるかも知れませんが、ラテン語で記された学名が世界共通の正式名で、その名前の付け方も厳密に決められ ているので、海外の見学者にも、この学名によって何という植物なのか、どのような仲間なのかが一目で分かるのです。現在、日本にしか生育していない植物でも、すべての植物は学名をもっているので、世界中、どのような言語を使う人々も、この学名で植物の名前を語ることができるのです。

日本では、学名の普及が遅れ、たとえ名札に学名が記されていても、学名で植物の名前を語ることが日常的でないために、あまり注意して見ることは少ないよ うに思います。しかし、学名が世界共通の正式名であるだけでなく、植物の進化の道筋や、それぞれの間柄(類縁関係)を示せるよう工夫がされていて、ラテン 語の意味を知ればなおさらに、植物の特徴や名前の由来まで分かるのです。横文字なのでなじみにくいかも知れませんが、意味が分かりはじめると、きっとおも しろくなるに違いありません。

たとえば、樹木の一つ、今年の1月・2月の2回の観察会で取り上げたスギ(普通名)の学名は、Cryptomeria japonicaでした(たよりのNo.72を見てくださ い)。学名はラテン語の二つの単語から成り立っています。そこで、このような名前の付け方を2名法と呼んでいます。この方法は、スウェーデン生まれのカル ル・リンネウスが1753年に著した『スピーシス・プランタルム(植物の種)』とともにはじまりました。最初の単語は属名、2番目の単語が種小名です。ス ギでは、スギを含む近縁のグループの名前であるスギ属を Cryptomeria、その中のスギのみを特定する名前である種小名を japonica と表記し、二つの単語を連記することで種の名を示しているのです。ちなみに、Cryptomeria はクリプトメリアと読み、「隠れた財産」「隠れた部分」という意味で、材木として非常に価値が高いことに由来し、japonicaはヤポニカと読み、「日本の」という意味で、日本にしか生育していない固有の植物であることを示しています。スギ属や近縁のヌマスギ属などからなるさらに大きなグループを普通名 でスギ科といい、学名では TAXODIACEAEと書きます。スギの名札はくらしの植物苑内にいくつかありますから、確かめてください。

最近は海外の見学者も増えてきましたが、私が知る範囲では、学名で会話が成り立っています。日本語の普通名のように英語名もありますが、英語名では通用 しませんでした。海外では学名で語られているのです。樹木だけでなく、草本もすべて普通名と学名をもっています。日本でも、早く、学名が普及していくこと を願っています。