くらしの植物苑観察会

毎月第4土曜日
13:30に苑内のあずまやに集合
15:00頃までの予定、苑内の季節の植物も観察

  • 11月23日 第56回観察会「冬の華・サザンカ」箱田 直紀(恵泉女学園大学)
  • 12月21日 第57回観察会「冬至の植物文化史」辻 誠一郎(歴博)
  • 1月25日  第58回観察会「木の文化史」山田 昌久(東京都立大学)

サザンカの季節

  • 執筆者:辻 誠一郎
  • 公開日:2002年11月20日

日本の季節は春夏秋冬の四つに分けられると古くから言われてきましたが、年間の雨量の変化に注目してみると、それぞれを さらに二つに分けることができ、合計八つに分けられることがわかります。春は雨の多い菜種梅雨(なたねづゆ) と少ない春に。夏は雨の多い梅雨と少ない夏に。秋は雨の多い秋霖と少ない秋に。そして冬は雨の多い山茶花梅雨(さざんかづゆ)と少ない冬に。もっともこれ は、関東地方や近畿地方など本州の中央部でのことです。古典菊が咲き誇る秋は、からっとしていますが、これを過ぎると、肌寒く、しっとりとした山茶花梅雨 がやってくるのです。白色で単弁の典型的なサザンカの開花期を考えると、秋の終わり、すなわち晩秋にあたるとも言えるかも知れません。

日本は世界でも雨の多い地域にすっぽり入ってしまいます。日本列島から中国中南部を経て東南アジア北部へ、そしてさらに西に伸びてヒマーラヤに達する地 域を頭に描いてみてください。弧状の日本列島から細長いヒマーラヤまで、三日月あるいは半月のような形をしているので、東亜の三日月弧あるいは東亜の半月 弧と呼ばれたりしてきました。この地域には、世界でも珍しい植物が集中的に分布していて、進化の面からは原始的とされる植物、逆にキクの仲間のようにもっ とも進化しているとされる植物、約二百万年前までの温暖な時代には北半球のどこにでも生育していた植物など、そんな変わり者の植物たちがこの地域に取り残 されたかのように分布しているのです。それを許しているのが多雨なのです。

サザンカの自然の分布域は九州から琉球列島です。縁が近いツバキの仲間は本州から琉球列島を経て、中国中南部にまで及んでいます。これらは、雨量が多い というだけでなく、年間を通しての雨の降り方(季節的な配分と言っています)と関係しているらしいのです。

江戸時代に選抜という方法によって多数の品種群が作りだされた古典園芸植物であるサザンカは、関東地方や新潟でもふつうに育成されていますが、本来の生 育地からはるか北に広がっていることが分かります。すなわち、サザンカへの人の密接なかかわりは、北方あるいは寒冷地への拡大をもたらしたと言えるので す。

11月の初め、私は合掌造りで知られる白川村を訪ねました。そこは異常なほどに早い大雪に見舞われていました。まだ青々とした木々が紅葉の前に雪に埋没 している様はとても珍しく、白花のサザンカをその中に見つけて、なお驚いたものでした。この地域の山の斜面には近縁のユキツバキが群生していて、一瞬ユキ ツバキかと思われたほどでした。

植物と気候は密接なかかわりをもっています。サザンカのもつ季節感は地域によって、また人によってどのように変わるのでしょうか。