くらしの植物苑観察会

毎月第4土曜日(13:30 ~ )
13:30に苑内のあずまやに集合

  • 7月27日(土) 第52回観察会 『古代のメロン仲間』 藤下 典之(前・大阪府立大学)
  • 8月24日(土) 第53回観察会 『ヒョウタンの系譜』 辻 誠一郎(歴博)

メロンの仲間

  • 執筆者:辻 誠一郎
  • 公開日:2002年7月18日

もう40年近くにわたってメロンの研究を続けてきた人がいます。メロン博士と呼ばれているこの人は、藤下典之さん。こん なに気安く呼んでは失礼かも知れませんが、とても気さくで、やさしく、話が盛り上がってくるともう止まらない、ちょっと変わった植物の熱愛家なのです。メ ロンの研究に没頭されたのは、それが、ちょっと変わった植物の典型のようなものであったからなのかも知れません。

メロンと言えば、アンデス、アムス、プリンスといった甘くて美味しい球形のメロンを思い浮かべる人が圧倒的に多いのではないでしょうか。スーパーマー ケットや市場で売られるメロンの大半が、それらの仲間で占められているからでしょう。

しかし、メロンは意外にも奥が深く、多様なのです。ここでメロンと呼ぶのは、ウリ科という大きなグループの中の、キュウリを代表種とするキュウリ属の1 種を指しています。メロンはキュウリと同じグループに属しているのです。1種なのに、直径2~3cmの小さなものから、長さが1mを越えるような長大なも の、アンデスなどの直径十数cmの球形のものまで、形も、色も、味も、じつに多様なものが含まれているのです。ちょっと変わった植物というのは、それだけ 幅広い変異をしていても、どのようなものとも交雑して、中間型をつくるなど、さらに変異の幅を広げることができるからなのです。

多様とは言っても、ある程度の識別が可能なまとまりがあり、これまでに世界で40前後の変種が認められています。メロンのほとんどは栽培されているの で、栽培変種と呼べるかも知れません。日本では、マクワあるいはマクワウリ、シロウリという変種が栽培されてきました。近年ではアミメロンなど西欧の甘く て丸いメロンに押されて、各地に残っていたマクワが急速に失われつつあります。シロウリの方は、ツケウリとも呼ばれるように奈良漬けや塩漬けなど漬物に今 でも利用されています。

ちょっと変わった変種があります。モモルディカメロンと呼んでいるものです。メロン博士こと藤下さんが、1978年に訪れた東京都の八丈島にあるのを見 てびっくりしたというものです。地元ではババゴロシという変な名前が付けられていました。シマウリとも呼んでいます。このメロンは水分が少なく粉っぽいと いう特異な性質をもっています。長崎県の福江島でも栽培されていて、こんなに離れた島にしか残っていないのが不思議です。
野生型のメロンも存在しています。サツマイモなど、さまざまな作物に混じって雑草のように繁殖しているので、ザッソウメロンと名付けられています。大き さや形が卓球のピンポン玉にそっくりです。瀬戸内海や長崎県の五島列島などの島々に残っています。

藤下さんは長い年月をかけて、ザッソウメロンの生育地とその特異な性質を調べてきました。また、遺跡から出土するメロンの種子から、日本では弥生時代に 初めてザッソウメロンが出現し、続いてマクワが伝えられ、古代では一時モモルディカメロンが育成されたことなど、メロンの歴史も明らかにしてきました。