くらしの植物苑観察会

毎月第4土曜日(13:30 ~ )
13:30に苑内のあずまやに集合

  • 6月22日(土) 第51回観察会 『海をわたってきた樹木』 辻 誠一郎(歴博)
  • 7月27日(土) 第52回観察会 『古代のメロン仲間』 藤下 典之(前・大阪府立大学)
  • 8月24日(土) 第53回観察会 『ヒョウタンの系譜』 辻 誠一郎(歴博)

海をわたってきた樹木1

  • 執筆者:辻 誠一郎
  • 公開日:2002年6月12日

人それぞれに歴史があるように、一本一本の植物、あるいは種類ごとにそれぞれの歴史があります。日常あまり注意もしない 植物にも、意外な歴史がかくされていることがあります。よくわかっているものもありますが、どうしてここにいるのか、検討もつかないものも実はたくさんあ るのです。

くらしの植物苑に生育している植物たちの解説板を見てください。原産地が日本ではないものがたくさんあるのに気づくはずです。えっ、これはもともと日本 にはなかったんだと、おどろかされるものもあるかも知れません。わたしたちの生活に深くかかわっている植物の中には、人によって海外から持ち込まれたもの がたくさんあるのです。とくに畑で栽培されている植物の大半はそうだといっていいでしょう。キュウリ、ネギ、ニンジン、ピーマン、トマト、ジャガイモ、サ ツマイモなど、数えればきりがありません。海をわたってきた華花によってわたしたちの生活が保たれているといってもいいかも知れません。

海をわたってきた植物たちのうち、いくつか樹木を取り上げて見てみましょう。

まず、モモとウメ。どちらもわたしたちの生活に深くかかわっています。花をめでるだけでなく、果実は食用として利用します。果実の中に堅い核があり、そ の中にアーモンドに似た種子が入っています。イネやムギと同様に、どちらも弥生時代以来、何度も中国や朝鮮半島から持ち込まれたと考えられ、遺跡から堅い 核が出土します。とくにモモは、その後、古墳時代、古代、中・近世を通じて重宝され、おびただしい量の核が出土しています。モモの果実は滋養・強壮によ く、核は精霊を宿し、邪悪なものを追い払うとされています。モモの板も正月に門にかざして魔よけとしました。

イチョウ。ある書によれば仏教とともに中国から日本に伝えられたとされますが、実際はどうだったかよくわかっていません。3百万年以上も前には日本にも 生育していましたが、その後は消滅していたものです。鎌倉時代には日本に渡来していたことが資料からわかります。

トチュウ。葉や茎の中にグッタペルカというガムをもっている特殊な植物ですが、一般には「とちゅう茶」で知られています。およそ2千万年前では日本にも 生育していましたが、その後は消滅していたものです。近年になって日本に持ち込まれました。

メタセコイア。三木茂博士が化石で発見した植物ですが、その後、中国で生きていることがわかり世界をおどろかせました。中国の生きた植物から増やした苗 がアメリカ人によって日本に贈られ、2代目、3代目が全国の校庭や公園ですくすく育っています。

最近では、アカマツ、マテバシイ、クリも海をわたってきたと考えられています。いろいろな樹木の歴史、履歴を考えてみましょう。