くらしの植物苑観察会

毎月第4土曜日(13:30 ~ )

  • 1月26日  第46回『魔除けと植物』辻 誠一郎(歴博)
  • 2月23日  第47回『日本の木工文化』
  • 3月23日  第48回『春の山菜』

冬至と植物

  • 執筆者:辻 誠一郎
  • 公開日:2001年12月21日

12月22日は冬至(とうじ)です。この日は、一年を通してもっとも日中の時間が短くなります。ということは、この日に向かってどんどん時間が短くな り、この日を境にどんどん長くなるということです。

中国では、太陽の運行の出発点が冬至です。暦の起点でもあります。中国の『荊楚歳時記』に、「冬至の日、日の影を量り、赤豆粥を作りて以て疫を禳(は ら)う」と記されています。赤豆とは小豆(あずき)のことで、すなわち小豆の粥(かゆ)を炊いて、疫鬼をはらったというのです。日本では、8世紀の始め頃 の記録に、終日宴会を催し、大いに祝ったとあります。珍しい品物や食べ物を進上し、身分の高い人々が集って飲食をともにしたのです。小豆の粥が振る舞われ たものと思われます。

小豆の粥を炊いて食する風習は今日でも残っています。1月15日のいわゆる小正月に多いようですが、冬至でも見られます。なぜ小豆の粥なのかは、いろい ろな言い伝えがありますが、おおむね次のように考えていいのではないかと思います。小豆はすなわち赤豆ですが、この赤には生命の活力である血の意味が込め られています。これは月経をもつ女性を象徴しています。そして粥はというと、その白い粘りのある液状のものは精液に見られ、男性を象徴しています。つま り、小豆と粥が一体となった小豆粥は、新たな生命の誕生を意味しています。一年でもっとも日中の時間が短くなる冬至は、生命が生まれ変わる象徴でもあり、 これを境に太陽がどんどん勢いづいていく始まりの日でもあります。これからの新しい一年を祝うという意味が込められているのです。

ヨーロッパでも冬至を祝う行事が古くからありました。そこで登場する植物は、セイヨウヒイラギとセイヨウヤドリギです。セイヨウヒイラギは常緑で、冬至 の頃には真っ赤な果実を付けています。この赤は、同じように月経をもつ女性の象徴であり、また、太陽を象徴する火の赤でもあると考えられています。セイヨ ウヤドリギはどうでしょう。この頃もセイヨウヤドリギはオウシュウナラの木に寄生し鋭気を放っていて、しかも白い果実をいっぱい付けているのです。この果 実をつぶしてみると、中から透明の粘液が出てきます。すなわちこの粘液が精液に見られ、男性の象徴とされたのです。軒下にこれらを吊るしたり、いっしょに 飾りつけをするのは、男女が一体となり、新しい生命をもたらすと見られたのです。クリスマスはもとは1月6日でしたが、325年以降、ユリウス暦の冬至で あった12月25日に変更されました。冬至の行事がクリスマスの行事になってしまったのです。

冬至に南瓜(かぼちゃ)を食べると中風や風邪にかからないと言われます。ミカンの仲間の柚子を風呂に入れて柚子湯にすると同じような効果があると言われ ています。これらの由来を探ってみるのも面白いでしょう。