くらしの植物苑観察会

毎月第4土曜日(13:30 ~ )

9月22日(土)第42回くらしの植物苑観察会
『歴史の中のヒョウタンとその仲間』
日本に渡来して約1万年の歴史をもつヒョウタンの歴史
辻 誠一郎(国立歴史民俗博物館)

ワタとその仲間 2

  • 執筆者:辻 誠一郎
  • 公開日:2001年8月25日

野菜としてのオクラ、鑑賞用としてのハイビスカスやフヨウ、ムクゲは、ワタとともに、いずれもアオイ科という大きなグループに含まれます。

アオイ科は世界に約90属1500種も知られる大きな植物群です。熱帯から温帯に広く生育しています。有用な植物が多く、人の生活とかかわりの深い植物 をたくさんもっています。日本の歴史の中で、とりわけかかわりの深いのは、ワタ、フヨウ、ムクゲ、オクラ、トロロアオイ、イチビではないでしょうか。

フヨウ、ムクゲ、広い意味での園芸種ハイビスカスは、みなフヨウ属というグループに含まれます。花が大きく、ブーゲンビリアなどとともにもっともよく知 られた花と言えるでしょう。フヨウは中国の中部が原産地とされていますが、日本の南部には野生状態が見られ、いつ頃渡来したのかよくわかっていません。ム クゲも中国では古くから栽培され、古くに朝鮮半島に伝わったとされます。今では韓国の国花になっています。

園芸種ハイビスカスは、ブッソウゲなどフヨウ属の多数の野生の種を交雑して作りだされた園芸品種の総称です。日本では沖縄市の市花であり、ハワイの州花 となっているほど親しまれています。沖縄では「赤花(あかばなー)」と呼んだり、「後生花(ぐしょーぬはな)」と呼んで、死後の幸せを願って墓地に植える 風習があります。沖縄にいつ頃どのようにして渡来したかは不明ですが、1641年に薩摩藩が徳川家康に献上した記録があり、当時の琉球にはそれまでに伝 わっていたと考えられます。

フヨウ属には稀に繊維を利用する植物もあります。ケナフとオオハマボウです。ケナフは最近では紙の原料として注目されていますが、茎に含まれる良質の繊維をロープや網などに古くから利用されてきました。オオハマボウはヤマアサともいい、沖縄ではユーナーと呼ばれ、その葉を便所の落とし紙に使ったといわれ ています。

オクラとトロロアオイは、ともにトロロアオイ属に含まれます。オクラは明治初期に導入されましたが普及せず、昭和40年代に入って人気を得た新しい野菜 です。アメリカネリや陸蓮根(おかれんこん)とも呼ばれます。トロロアオイは和紙をつくるときのネリという糊を利用されます。

イチビは、フヨウなどとは花がずいぶん違うので、別のグループであることが分かります。小さく黄色い花は、ワインの色付けなどに利用されました。かつて は繊維植物として広く栽培されましたが、現在ではほとんど利用されなくなりました。葉や茎の炭を火打ち石で生じた火を移す火口(ほくち)に用いられました。