くらしの植物苑観察会

毎月第4土曜日(13:30 ~ )

7月28日(土)第40回くらしの植物苑観察会
『変化朝顔の謎とき』
朝顔とは思えない葉・花に変化する仕組み
仁田坂 英二(九州大学)

今年の「伝統の朝顔」

  • 執筆者:辻 誠一郎
  • 公開日:2001年7月11日

日本の夏をいろどるものと言えば、朝顔をあげないわけにはいきません。いまでは変わり咲きの朝顔(変化朝顔)の種子がタネ屋さんにも出回るようになって きました。かつては夏休みの宿題の材料であった朝顔が、家庭の園芸に浸透しようという勢いです。

くらしの植物苑特別企画「伝統の朝顔」は、今年でもう3回目になります。いま、順調に準備が進められていますが、新しい朝顔の仲間たちがすくすくと育っ ているところです。3回目にもかかわらず、これまでとは一味違った内容が準備されています。そのへんを少し紹介しましょう。

今回の展示の特徴は、「正木 (まさき)系統」の多様性に着目しているところです。この系統は、葉の形や花の形・咲き方にあらわれる変化が比較的単純なもので、どの株でも種子ができる ために、毎年の系統の維持がしやすいものです。ただ、変化が単純だといっても、朝顔がもっている多くの突然変異を目の前にすると、やはり朝顔の多様性に驚 かされるばかりです。江戸時代の人々が、じっくりと観察をしながら、それらの変異のほとんどを見逃さずに見つけてしまったというのは、朝顔の多様性が人々 を引きつけてやまなかったという証拠かも知れません。

主だった変異は、「大輪咲」「石畳(いしだたみ)咲」「縮(ちぢみ)咲」「乱菊(らんぎく)咲」「蝙蝠(こうもり)南天」「桔梗咲」「渦(うず)」「木 立(こだち)」「帯化」「枝垂(しだれ)」「立田」「車咲」などです。それぞれ、葉の形、茎の形状、花の形・咲き方に特徴がありますが、なかでも「渦」 「木立」「枝垂」は注目していいものでしょう。

「渦」は、植物体が全体に詰まっていて、葉も茎もサボテンのようなイメージを与えます。葉は肉厚で、全体にごわごわしています。茎は太く、あまり巻きつ くほうではありません。花びらも肉厚です。そのため、開花してからの花のもちがよく、涼しい日陰では夕方まで咲いています。茶系統や紅系統など花色に江戸 の色彩感があふれています。

「木立」は、茎の節の間が詰まっているので、大きくなってもせいぜい30センチメートル程度にしかなりません。茎は棒のようになって、「渦」と同じよう に巻きつきません。つるが伸びないので、盆栽のように机の上に置いておくことができます。花はいくぶん切れ込み、星形になることがあります。

「枝垂」は、つるが上に伸びるという性質を失っているため、下に垂れ下がります。花も下を向いて咲きます。「州浜」をもつものや、「桔梗渦」や「柳」を もつものもあり、葉や花にも変化があらわれます。言い方を換えれば「ハンギング朝顔」となるでしょうか。軒下に垂らしてみると趣があります。

もうひとつ、「大輪咲」が多様化したジャンルがあります。「大輪朝顔」です。花の大きさだけでなく、花の色と紋様に多様な変化を引き出したものです。色 と紋様の芸術といってもよいでしょう。

「柳牡丹」や「獅子牡丹」など「出物系統」ももちろんあります。分離した4兄弟から、江戸の先端科学、人々の創意工夫を確かめてみてください。