くらしの植物苑観察会

毎月第4土曜日(13:30 ~ )

6月23日(土)第39回くらしの植物苑観察会
『日本の緑のベルト・森林帯』
植物苑の樹木から見る日本の森林帯と季節の特徴
辻 誠一郎(国立歴史民俗博物館))

日本の緑のベルト・森林帯

  • 執筆者:辻 誠一郎
  • 公開日:2001年6月18日

緑の自然は、植物相と植生という二つのとらえ方によって語られてきました。植物相というのは、日本列島にどのような植物の種類が分布しているのか、地域 によってどのように変化をとげているのか、また海を越えた地域とどのような類似性や相似性があるのかといった、緑をつくっている植物の内容のことです。一 方の植生は、景観とか相観といって、森林なのか、草原なのか、砂漠なのか、またどのような社会的なかかわり方によってつくられた景観なのかといった、緑を つくっている社会の内容のことです。二つのとらえ方は互いに密接な関係をもつことは言うまでもありません。森林でも、針葉樹林であったり、落葉広葉樹林で あったりしますが、その中身、つまり種類が違えば、社会的なかかわり方も違ってくるからです。

ここでは、植生というとらえ方から、日本の緑の自然を見てみることにしましょう。

日本列島は南西から北東に細長く伸びた弧状の列島で、東アジアの中では太平洋に突き出たような形をしています。花を束ねてつくった首飾りのようなので、 花綵(はなづな)列島と呼ばれることもあります。南方から流れてくる勢力の強い「黒潮」という暖流が太平洋側を洗い、その分流である対馬暖流が日本海側を 洗っています。このような特異な位置と周辺の自然環境が、日本列島の植生に大きくかかわってきました。

植生は気温と降水量の変化に対応して内容が変わることが古くから知られています。日本列島でも、高山から平野まで、北海道から沖縄・南西諸島まで、気温 の変化に対応したいくつかの植生帯に分けることができます。とても大切なことですが、日本列島は降水量が多いために、どこにでも森林が形成されているの で、植生帯は森林帯と呼び変えることができます。つまり、日本列島の緑の自然はいくつかの森林帯からなっているのです。

森林帯にはいくとおりかの分け方があります。ここでは植物生態学者である吉岡邦二さんらの分け方を見てみましょう。気温の低い方から、高山帯、亜高山 (亜寒帯)針葉樹林、北海道中北部にある北方針・広混交林、落葉広葉樹林、中間温帯林、常緑広葉樹林に分けられています。高山帯はハイマツ帯とも呼ばれ、 山岳地帯のきびしい環境下で辛うじて生活しているハイマツなどによって特徴づけられます。亜高山針葉樹林は、アオモリトドマツ(オオシラビソ)やシラベ、 トウヒといった針葉樹やダケカンバのような落葉広葉樹からなっています。北方針・広混交林は、シナノキやエゾイタヤといった落葉広葉樹と針葉樹であるエゾ マツが混交した特異な森林帯です。落葉広葉樹林は、ブナ帯と呼ばれるように、ブナやミズナラなどからなっていて、関東周辺の山地や東北地方では見慣れた景 観です。中間温帯林は、モミやツガといった針葉樹のほか、クリ、コナラ、クヌギなどの落葉広葉樹からなっています。常緑広葉樹林は、関東平野ではすっかり おなじみです。スダジイやシラカシなどのいわゆるカシ類、タブノキといった常緑の広葉樹からなる森林帯です。照葉樹林帯とも呼ばれます。

くらしの植物苑では、それぞれの森林帯の主役たちがどれだけ見つかるでしょうか。