くらしの植物苑観察会

毎月第4土曜日(13:30 ~ )

10月 28日(土)第3 1回くらしの植物苑観察会 
「伝統の植物3」
講師:渡邊重吉郎(国立歴史民俗博物館)

どんぐりとクリのはなし 3

  • 執筆者:辻 誠一郎
  • 公開日:2000年9月20日

イガイガのクリがポタポタ落ちています。中から、栗皮色(くりかわいろ)とたとえられる明るい茶色をしたクリの実がのぞいています。この実を包んでいる イガイガは、ドングリの仲間がみんなもっている「おわん」の部分にあたります。クリは「おわん」にすっぽり包まれて大きくなり、実が栗皮色に熟してきたこ ろ、イガイガが破れて栗皮色が顔を出してくるのです。

青森では、中秋の名月に、ススキとともに、栗皮色の果実をもったイガイガの付いたクリの小枝を一緒に添えます。ワレモコウやオミナエシなど、いろいろな 秋の草花を添えますが、ススキとクリは必ず添えるものなのです。中秋の前日や当日は、ススキとクリの束を買い求めた人達が町の中を行き来しています。

ところでクリは、日本の歴史をかたるとき、文句なしに重要な植物でした。青森の三内丸山遺跡では、今から6千年の前の縄文時代前期から、クリはたいへん 重要な植物でした。食料としてだけではありません。建築材や土木工事に使う杭、さらに舟の櫂(かい)にいたるまで、クリの木材はさまざまな用途に使われて いました。三内丸山遺跡が保存されるきっかけになった直径 1メートルを越える巨木からなる掘っ建て柱は、すべてクリの木材からできていました。

信じられないと言う人がいるかも知れませんが、もっとすごいのは、生ゴミなどとともに捨てられていた大量の木炭のかけらも、ほとんどがクリの木材でし た。これはどういうことでしょう。食料として重要で、木材としても重要なのに、燃料としても大量のクリの木材が使われていたということです。大切な木をど うして燃やしてしまうのか。それは、さほど不思議なことではありません。ちょっと前まで、農家では、里山のアカマツを丹精込めて維持しながらも、アカマツ の割木を風呂炊きや飯炊きの燃料にしてきたのです。裏山のアカマツ林から、適度に間引いて木材を燃料としたり、あるときは土木工事のときの杭、あるときは 家屋の建て替えのときの建築材にしたのです。資源が枯渇せず、ずっと維持できるような利用の方法、何だか理想的な資源の使い方のようですね。縄文時代の人々は、すでにそんなことをしていたのかも知れません。

三内丸山遺跡(巨木からなる掘っ建て柱)