くらしの植物苑観察会

毎月第4土曜日(13:30 ~ )
4月のみ 29日(みどりの日)

『サクラの仲間』 
講師:辻 誠一郎(国立歴史民俗博物館) 
3月 25日(土)くらしの植物苑観察会 
13:30~ くらしの植物苑

ウメとモモ-遺跡発掘から知る人との深いかかわり-

  • 執筆者:辻 誠一郎
  • 公開日:2000年2月20日

ウメ(梅)とモモ(桃)、どちらも古くから日本人の生活に深くかかわってきた植物です。ウメは 1月の中頃には咲き 始め、今でも紅や白の花を咲かせているのを見かけます。モモの開花を見かけることは少ないようですが、桃の節句には賑やかに彩り、生け花にもよく使われま す。ウメもモモも、ずいぶん前に咲きおわってしまったと思われがちですが、サクラの開花を待っているかのように、今でもあちこちで咲き誇っています。

遺跡の発掘調査では、ウメもモモも、その果実の中にある堅い核(かく)と呼ばれる部分がよく出土します。ときどき タネと呼んだり種子(しゅし)と呼んだりしているところです。モモを食べたとき、中から出てくるあのカチカチの部分です。梅干しを食べたとき、カチンと歯 にこたえるあの部分です。この堅い部分は、種子を包んでいる果実のいちばん内側の皮にあたるところで、内果皮と呼んでいます。種子はその堅い皮の中に入っ ていて、仁(じん)と呼んでいます。

ウメの核は、弥生時代から古墳時代に出土し始め、古代・中世・近世と、ごくふつうに遺跡から出土していて、人々の生 活に深くかかわってきたことが分かります。食用か鑑賞用か、はっきり分かっているわけではありませんが、大陸からさまざまな作物とともに日本にもたらされ ました。古代からふつうのゴミとして出土しているので、すくなくとも食用として利用されていたことは間違いありません。中世以降では、食用として各地に梅 園がつくられ、それが花見の対象にもなったと言われています。水戸の偕楽園(かいらくえん)の梅園も、おにぎりに入れる梅干し用としてつくられたとされて います。

モモの核も同様に、弥生時代以降では、おびただしい出土例があります。長崎県の大村湾に面する伊木力遺跡では、縄文 時代前期の小柄なモモが見つかっています。これが日本では最古のモモです。古墳時代から古代、モモの核は木簡(もっかん)や人形(ひとがた)とともに祭祀 が行われた場所からよく出土しています。核は加熱すると二つに割れますが、きれいに割れるかどうかで占いごとをしたと考えられます。井戸の中から出土する ことが多いことも、何かそんな占いと関係があるのかも知れません。モモには人の魂が宿ると考えられ、古くからさまざまな言い伝えがありました。

ウメもモモも、サクラに近い植物で、サクラ属という同じ仲間に属しています。花を愛でるだけでなく、占いなど祭祀 の面でも深くかかわっていたようです。遺跡の発掘調査から、これまで知られなかった人とのかかわりが分かってくることを期待しています。