くらしの植物苑観察会

毎月第4土曜日13:30 ~
12月25日(土)

『木とくらし』 
講師:小西 達夫(国立科学博物館) 
講師:渡辺 重吉郎(国立歴史民俗博物館) 
1 2月 25日(土)くらしの植物苑観察会

木とくらし[門松]

  • 執筆者:渡邊 重吉郎
  • 公開日:1999年12月25日

正月の行事やしきたりの中に、いろいろな植物が多く用いられました。古くから、年神(正月の神様で祖霊神にして穀霊神)を迎えようとする信仰がありまし た。その媒介を果たすのが門松でした。昔は門松その他の飾り松を山へとりに行ったのは、 1 2月 13日の事始めの日のようですが、それでは事実上、早すぎる ために、次第に暮れに近い日の 28日頃に行う地域が多くなりました。松迎えをして門松を立てますが、その起源には諸説があります。昔から門神・宅神を祭 り、一年中の邪気や汚れを払う信仰があり、その年の幸福を祈る行事に発展したものと言われています。門松はもともと、歳神様の迎えのためにお正月早々、我 々の家を訪れる歳神様が下られる道しるべです。わが国での門松の最初の記録と言われるのは、藤原公実の『堀河院御時百首和歌』( 1 2世紀)にある、待賢門 院堀河(鳥羽天皇の皇后)の「門松をいとなみ立るそのほとに 春あけかけかたに夜や成るらん」というお歌です。このお歌からして、少なくとも堀河天皇の頃(1086~1107)には民間行事として、一般の風習になっ ていったと思われます。それにしても、新年に門松を立てる行事は、平安時代以前にはなかったようです。平安末期の歌謡集『梁塵秘抄』に「新年 春くれば 門に松こそ立てりけり松は祝いのものなれば 君が命ぞ長からん」という歌詞がみられるように、門松には年頭の祝頭・長寿の意も込められて います。

厳寒にも緑を失わない松、しなやかに伸びる竹、そして厳寒時に花咲き薫る梅。松・竹・梅を「歳寒の三友」と呼び、古代から「めでたきもの」のしるしとさ れてきました。特に松については、「羽衣伝説」を題材とした能曲「羽衣」は、松林が舞台です。なぜ松なのか、それは「松は神の天降りを待つ」神聖で、めで たい木とされているからです。「相生の松」は能曲「高砂」の「摂津の住吉の松」と「播磨の高砂の松」のことで、長寿の象徴とされる松です。「鏡板の老松」 は能舞台の正面の奥の羽目板の壁に一本の老松が描かれています。能が老松を背景に演じられるようになったのは、奈良春日大社の一の鳥居のところにある影向 の松の下で神事芸能が行われたことに由来しています。松は現世と神仏とを媒介する役割があり、鏡板の老松は神事にふさわしい背景と言えます。