くらしの植物苑
くらしの植物苑だより
No.24 1999年11月22日
◆くらしの植物苑観察会◆
毎月第4土曜日13:30 ~
11月27日(土)
『冬を迎える』
講師:辻 誠一郎(国立歴史民俗博物館)
11月27日(土)くらしの植物苑観察会
人と植物の冬支度
今年はいつまでも暑さが残り、ついこの前まで、秋らしくない天気が続いていました。11月の上旬のサハリンも、まれに吹雪になるものの、例年に比べて温 かく、雪がほとんどありませんでした。地球の温暖化が反映されているのでしょうか。
秋が深まり、冬が近づいてくると、植物たちも急に姿を変えていきます。落葉するもの、真っ赤な果実だけを残しているもの、ますます色濃くなる常緑の木 々。みすぼらしく、さびしい姿をしていて、植物苑は殺風景に見えますが、それぞれに冬支度を整えているのです。人もまた、冬の寒さに負けないようにと、さ まざまな工夫をこらしています。
手のひらのような大きな葉をもつトチノキを見てみましょう。トチノキの葉は複数の葉が集まっているように見えますが、これでも一枚なのです。葉の付け根 と葉がついていた枝の痕跡を見てみると、まんじゅうを縦割りしたような痕跡の中に、ふくらみに沿っていくつもの小さなイボが並んでいるのが分かります。こ れは維管束(いかんそく)といって、水分などが行き来するパイプの断面なのです。人でいえば循環器系統、つまり血管にあたるもので、植物の生命を支える重 要なものです。枝の先に、ベタベタしそうな黒光りした大きな芽がついています。この中で、ゆっくり来年の支度をしているのです。ベタベタした液はとても渋 いので、動物に食べられないようにしているのかも知れません。
周囲のいろいろな木々の枝を見てみると、同じような葉の痕跡や芽が見られます。しかし、どれ一つとっても、同じ形をしたものはありません。木々の芽は毒 だとよく言われますが、トチノキと同じように動物に食べられないように保護しているのかも知れません。植物たちにとっては、来年を生き抜くためのもっとも 大切な部分なのですから。
さて、人も、冬の寒さを乗り切るために、いろいろな支度をします。冬至には、「ん」のつく植物、たとえばミカン、レンコンを食べると縁起がいいといいま した。トウガラシやトウナス(カボチャ)など「と」のつく食べ物も体にいいとされます。カボチャの黄色いカロチノイドはビタミンAになり、風邪を防ぐのに 効果があります。
ちょっと田舎へ行くと、車窓からでも、軒下の吊るし柿を見かけるようになりました。ひきたてのソバ(蕎麦)からつくった温かいそばがきを魚や肉にかけて 食べると、ほかほかしてきます。そばがきはビタミンを無駄なくとれるので、冬を乗り切るための滋養の補給に欠かせません。
人と植物の冬支度を、生活の中から見つけてみましょう。
(辻 誠一郎)
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