くらしの植物苑観察会

毎月第4土曜日13:30 ~
1 1月 27日(土)

『冬を迎える』 
講師:辻 誠一郎(国立歴史民俗博物館) 
1 1月 27日(土)くらしの植物苑観察会 

どんぐりとクリのはなし2

  • 執筆者:辻 誠一郎
  • 公開日:1999年11月22日

どんぐりがあちこちの路上に落ちています。車が通ると、カラカラ、パシパシと音をたてて、にぎやかにはねています。子供たちは、足で踏んづけて、パ シッ、パリッと、歯切れよい音をたてて割れるどんぐりを、学校の帰り道に楽しんでいます。

佐倉でどんぐりといえば、ほとんどはシラカシというカシ類の一種です。どんぐりは小さく、まだ緑っぽいものもずいぶんあります。ときにはマテバシイとい う種類もあります。これは背の高い大きなどんぐりをつけ、きれいな茶褐色になっています。シラカシのどんぐりは、渋くてそのままでは食べられません。で も、マテバシイは、ゆでるか焼けばそのままで食べられます。渋みがずっと少ないのです。

くらしの植物苑にはいくぶん大きなシラカシが何本かあります。カシ類はすべて常緑で、冬でも葉をつけていますからすぐに分かります。どんぐりが群がって いるはずです。

関東でカシといえばふつうシラカシを指しています。東京あたりでは間違いなくシラカシです。埼玉でも、群馬でもシラカシです。庭に植えられることもあり ますが、もっとダイナミックなシラカシの林を見ることができます。屋敷林です。屋敷を取りまいている背の高い生垣がそれです。東京ではめっきり少なくなっ てきましたが、郊外に出ると、屋根がかくれてしまうほどの生垣を見ることができます。東京郊外の農家では、屋敷の南側に生垣があります。風除け、日除けの ためなのです。強い南風と日射をさえぎる役割を果たしています。埼玉から群馬にかけては、屋敷の東側と北側の両側に設けられています。強い北東風を防ぐた めです。このような生垣を群馬では「かしぐね」と呼んでいます。

シラカシの屋敷林がつくられたのは江戸時代よりも前であることが分かってきました。どこまで逆上るのか、歴史資料や植物遺体から詳しく調べてみなくては なりません。屋敷林をつくるシラカシは人がいつもめんどうをみてやらないと枯死してしまうとことが分かってきました。シラカシの屋敷林は、人々の創意工夫 によってつくり出されたものなのです。江戸時代に書かれた『農業全書』には、「殊にシラカシ性強し」「凡(およそ)十五の能あり」とあり、発芽力よく、生 長はやく、薪にしてよく炭にしてよく、材は加工しやすく、山の水もちよく、落ち葉は肥料としてよく、といった具合によいことずくしです。シラカシを植える ことを奨励していました。

シラカシにも、人との長くて深いかかわりの歴史が秘められていたのですね。