くらしの植物苑観察会

毎月第4土曜日13:30 ~
10月 23日(土)

『植物の名前を調べる』 
講師:遊川知久(国立科学博物館) 
10月 23日(土)くらしの植物苑観察会 

どんぐりとクリのはなし1

  • 執筆者:辻 誠一郎
  • 公開日:1999年10月20日

秋は実りの季節です。ナシ〔梨〕やリンゴ〔林檎〕が果物屋さんの店頭をにぎわしています。クルミ〔胡桃〕やクリ〔栗〕も置いてあります。この季節は、地 方ごとに違った果物や木の実が市場をにぎわしています。北の青森では、木箱にぎっしりつまったトチノキ〔栃〕の実を今でも見ることができます。

どんぐりやクリの実は、秋の木の実の代表的なものです。今ではどんぐりを食用にすることはほとんどありませんが、かつてはたいへん重要な食料でした。縄 文時代の遺跡では、大量のどんぐりの皮(果皮)が貝塚のようになった廃棄物層がしばしば見られます。食用にされる前の完全な形をしたどんぐりが貯蔵穴から 大量に見つかることもあります。九州や四国の山間部では、イチイガシのどんぐりのでんぷんからこんにゃくをつくって食べる習慣が今でも見られます。「いち ごんにゃく」といいます。韓国では、同じようなこんにゃくをムックといって、今でもふつうに作っています。韓国の市場にでかけると、必ずといっていいほど ムックを見かけることができます。

どんぐりとは、ブナ科という大きなグループのうち、コナラ属、シイ属、マテバシイ属に入れられる植物の果実のことです。この仲間はみんな、果実が堅い皮 をもったどんぐりになっていて、その下半部がおわん(殻斗「かくと」といいます)によっておおわれています。堅い皮なので果実を堅果といい、どんぐりを実 らせる植物を堅果類といったりします。おわんすなわち殻斗をもっているのがブナ科の大きな特徴です。これは果実ではありませんが、もともとは葉の器官ある いは葉がたくさんついた枝が果実を抱え込むようになったと考えられています。いろいろなどんぐりをつける植物の殻斗を見てください。鱗が集まったようなも の、毛むくじゃらのもの、リング状の筋が入ったものがあり、いくつかのグループに分けられそうです。