このページの目次
第405回「身体から眺める教育の歴史」 第404回「全共闘とは何だったのか―歴博所蔵資料から見える世界―」 第403回「自然の中の文化・歴史を守る」 第402回「世界史の中の漆文化」 第401回「漆芸からみえる沖縄のすがた」 第400回「晩ご飯は何?資料のデンプンから探る昔の食べ物」 第399回「ザ・メイキング オブ デジタルで楽しむ歴史資料」 第398回「幕末維新期の新吉原遊廓について」 第397回「朝鮮半島へ渡った倭人たち-5,6世紀に朝鮮半島で築かれた倭系古墳-」 第396回「古代日本、北の役所・南の役所-近年の発掘調査から-」

第405回「身体から眺める教育の歴史」

開催要項

日程 2017年12月9日
講師 樋浦 郷子(本館研究部)

開催趣旨

近世から近代へと移り変わるとき、例えば手習い塾から学校のように、教育の姿、形、制度は大きく変化したと言われます。そうした歴史の転換点と教育の変わり方(または、隠れてしまった変わらなさ)について、身体をキーワードにして考えてみたいと思います。

第一のポイントは、耳です。そしてそれを展開させ、聴くこと、聞こえることです。第二のポイントは、足です。それと関連して、歩くこと、すわることです。第三のポイントは、「測定」によって形成される身体と価値観についてです。

多くの人々とっては、耳や足の存在はごく当たり前のもので、そこから歴史を眺めようとするというのは、少し妙なことに思われるかもしれません。けれども、150年ほどさかのぼってみると、音の聞こえ方も、自らの身体の捉え方も、現代とはまったく異なっていたことがわかります。

この講演を通じて、歴史をご自分の身体で感じ取っていただければと思っています。

第404回「全共闘とは何だったのか―歴博所蔵資料から見える世界―」

開催要項

日程 2017年11月11日
講師 荒川 章二(本館研究部歴史研究系)

開催趣旨

2017年10月11日(水)から12月10日(日)まで企画展示「「1968年」—無数の問いの噴出の時代—」を開催しています(企画展示室A、B)。

今回の企画展示は、日本の社会運動が、それまでの組織的な課題設定・問題解決方式に対し、「個」「私」の主体性を重視し、社会に向けてそれぞれの「問い」を発し、自分の責任で行動を展開するという特徴を強くあらわしはじめた1960年代末の社会運動に、できるだけ総合的な光を当てようとしたものです。

これらの社会運動のうち、この講演会では、学生運動を取り上げます。1968年〜1969年の学生運動は、ノンセクト系学生を中心とする「全共闘」という組織形態の大学闘争が広範に展開された時期でした。全共闘運動についての研究史は少ないのですが、問題提起的な意味合いにて、国立歴史民俗博物館の所蔵する日大闘争資料・東大闘争資料から見えてきた全共闘運動の実態、意義について考えてみようと思います。

第403回「自然の中の文化・歴史を守る」

開催要項

日程 2017年9月9日
講師 柴崎 茂光(本館研究部民俗研究系)

開催趣旨

2017年8月1日(火)から2018年1月8日(月・祝)まで第4展示室(民俗)特集展示『国立公園 今昔』を開催しています。

今回の歴博講演会では、この特集展示に関連する内容として、「自然の中の文化・歴史」をとりあげ、そうした文化や歴史を守ることの意味・意義について考えたいと思います。

具体的には、「手つかずの自然」といわれる場所に、文化・歴史を伝える遺構や記憶が残っているのかという点について、世界遺産の事例などを踏まえながら議論します。そして自然の中の文化・歴史が忘却されるプロセスについて、「法制度」の視点や、「人々の関心の移り変わり」という様々な視点から考察します。

また近年は、世界遺産、ジオパーク、生物圏保存地域(通称、ユネスコ・エコパーク)、日本遺産などに指定・登録されることを契機として、地域振興に活用しようとする動きも見られるようになりました。こうした、自然やそれに関連する文化・歴史を、地域づくりに活用することの意義・問題点も明らかにしたいと思います。

第402回「世界史の中の漆文化」

開催要項

日程 2017年8月12日
講師 日高 薫(本館研究部情報資料研究系)

開催趣旨

ウルシとその仲間の木を利用する文化はアジア特有のものであり、東アジアおよび東南アジアの諸地域では、それぞれ漆工技術が発達しました。「漆文化圏」とも呼びうるこれらの地域において生産された個性豊かな漆工品は、早くから特産品として隣接する地域にも流通していたことが知られています。交易の中心となったのは、多彩な装飾技法を駆使した高級な漆工芸品です。華麗な装飾性を有する漆工品は、その性格を反映して、主に外交を彩る贈答品として往き来し、受け容れられた後は、しばしば威信材として機能しました。

16世紀半ば以降、アジア海域を訪れるようになった西洋人を窓口に、漆文化はさらに広範な地域とのつながりをもつようになります。西洋人の注文による輸出用の漆工品の製作は、ヨーロッパ市場のみならず、インドやシャム(タイ)、メキシコなどの市場をも明確に意図したものでした。これらの地域には、天然漆の文化が存在しなかったため、漆という塗料や漆工品そのものが、極めて珍しくエキゾチックなものだったと考えられます。生活様式を異にする地域に向けた輸出漆器は、日本国内や中国などで流通していた漆器とは、かけ離れた外観をもつものでした。

本講演では、世界史の中における漆文化交流を、輸出漆器の製作地における伝統と、注文者または運び手の意識、それらを受け容れる消費地の人々の需要という複数の要素をもとにとらえ直してみたいと思います。

第401回「漆芸からみえる沖縄のすがた」

開催要項

日程 2017年7月8日
講師 宮里 正子(浦添市美術館)

開催趣旨

蒼い空と海、そして豊かな珊瑚礁に連なる49の有人島、140万人の人々が暮らす最南端の県が沖縄県です。

沖縄県は、15世紀に琉球王国として統一され、500年に渡り独立国家を営んできました。中国の冊封国として、アジア諸国と交易を展開する一方、江戸幕府の幕藩体制にも組み込まれました。1879年(明治12)、王国は崩壊し沖縄県が設置され、第二次大戦後は米軍統治下となるなど、他府県には例をみない歴史を背景に今日に至っています。

沖縄の文化には、中国や日本の大きな影響を受け熟成させた、特色ある複合文化の要素色濃く表れています。特に漆芸は外交を彩る「琉球王朝の華」として王府の製作管理の下で、精緻な漆器が中国や日本への献上品となりました。明治以降は、日本の殖産工業の担い手として漆器産業は発展しました。

本講演では、「沖縄のウルシの木は?」、「赤い琉球漆器は豚の血?」などの質問の多い沖縄の漆芸について、沖縄の歴史と重ねあわせながらお話します。

第400回「晩ご飯は何?資料のデンプンから探る昔の食べ物」

開催要項

日程 2017年5月13日
講師 渋谷 綾子(本館研究部)

開催趣旨

デンプンは種子植物やシダ植物などの高等植物の種子や果実、茎(幹)、葉、根などに蓄えられ、植物のエネルギー源として機能しています。人間はこのデンプンを含んだ植物を食べ物として生き続けてきました。デンプンは非常に安定した化学構造をもつため、熱を受けない限り、どのような環境でも何千年もの間残ります。考古学では、デンプンの粒子(デンプン粒)が昔の人びとの食べ物を明らかにする証拠材料として注目されています。

日本では石器や土器、人骨の歯石から、木の実だけでなく、ユリやイモなどの根菜類のデンプン粒が発見されています。私が調査しているトルコや中国の遺跡で出土した人骨の歯石にも、デンプン粒が多数含まれていました。これらはどんな植物が食べられたのかを知る直接の証拠となります。最近では古文書の紙の素材を知る方法として、デンプン粒を用いた研究も試みられています。

本講演では、人間が自然の中からどんな植物を選び出し、どんな道具で食料に変えたのか、デンプン粒というミクロの視点からお話します。

第399回「ザ・メイキング オブ デジタルで楽しむ歴史資料」

開催要項

日程 2017年4月8日
講師 鈴木 卓治(本館研究部情報資料研究系)

開催趣旨

3月14日から開催中の企画展示「デジタルで楽しむ歴史利用」について、ザ・メイキングと題して、その準備の舞台裏をご紹介いたします。

本企画展は、パソコンやスマートフォンをはじめとするデジタル技術を利用して、さまざまな形で歴史資料を楽しんでもらおう、という催しです。どうやったら来館者のみなさまに歴史資料を楽しく分かりやすく見ていただけるか、資料のことをよりよくわかっていただけるか、デジタル技術を使って挑戦しています。

通常は歴博の研究・展示・教育活動を支える裏方の存在であるデジタル技術を、この展示では思い切って前面に出してみました。また、歴史学に造詣の深い方向けの難しい内容になってしまわないよう、どなたにも楽しく歴史資料に親しんでいただける展示を目指しました。

第398回「幕末維新期の新吉原遊廓について」

開催要項

日程 2017年3月11日
講師 横山百合子(当館歴史研究系)

開催趣旨

城下町の遊廓や宿場・湊町など、近世には公認・準公認の売春施設が数多くありました。なかでも、江戸で唯一の公認遊廓であった新吉原遊廓は、数千人の遊女をかかえる買売春の拠点であり、近世の買売春をめぐる言説の発信源としても圧倒的な存在感を示していました。錦絵や板本、黄表紙や合巻などのなかで繰り返し描かれる新吉原の華やかなイメージは、現代でも広く知られています。

しかし、近年新吉原遊廓の歴史的実像を探る試みがすすんできました。幕末の新吉原遊廓の遊女屋たちの経営の実態や、全国に広がる遊女屋を支える金融ネットワーク、遊女たちの生活や激しい抵抗など、遊廓をめぐる社会を全体として捉える試みが始まっています。

江戸時代の社会において、新吉原遊廓とはどんな位置にあったのか。遊女屋とはどのような存在なのか。遊客はどんな人たちだったのか。そこに生きた遊女たちは、どのように暮らし、どんな心情を抱いていたのか。その行動は遊廓をめぐる社会をどのように揺りうごかしたのか。本講演では、それらを紹介し、幕末維新期における遊廓の実相と近世の都市社会の特質を探っていきます。

第397回「朝鮮半島へ渡った倭人たち-5,6世紀に朝鮮半島で築かれた倭系古墳-」

開催要項

日程 2017年2月11日
講師 高田 貫太(当館考古研究系)

開催趣旨

古墳時代の「倭」の社会は、朝鮮半島から多様な文化をさかんに受け入れ、取捨選択し、変容させ、みずからの文化として定着をはかっていました。須恵器や鉄器の生産、貴金属をもちいた金工の技術、馬を飼育するノウハウ、灌漑技術、ひいては蒸し器などの炊事道具やあらたな暖・厨房施設(カマド)など、じつにさまざまな情報や技術、道具が朝鮮半島からもたらされました。特に5世紀は「技術革新の世紀」と評価されます。

先進の文化を入手するために、倭人たちは、さかんに海を渡り、朝鮮半島の百済や新羅、加耶、そして栄山江流域の人びとと交渉を重ねていました。近年、朝鮮半島中南部の各地で、倭人たちが、現地の人びととの交流の中できずいた墓や、実際に暮らした集落、もしくは航海安全を願った祭場などが、確認されるようになってきています。講演の中で、古墳や集落を紹介しながら、当時どのような人びとが海を渡り、朝鮮半島の人びととどのように交流を重ねたのか、について考えてみたいと思います。

第396回「古代日本、北の役所・南の役所-近年の発掘調査から-」

開催要項

日程 2017年1月14日
講師 林部 均(当館考古研究系)

開催趣旨

飛鳥・奈良時代に列島中央に成立した古代国家は、列島の北(現在の東北地方)、南(現在の九州)に居住する人々を「蝦夷」、「隼人」と呼んで、特別な支配システムで統治をおこないました。

列島の北では、仙台郡山官衙遺跡や多賀城、秋田城という城柵官衙と呼ばれる、この地域にしかみられない特別な役所を設置して、東北地方の支配を進めました。いっぽう、列島の南では、国の役所より1ランク上に位置づけられる大宰府という役所を設置して西海道諸国(九州)を支配しました。また、近年の研究では、このような地域におかれた役所には政治的な拠点であるとともに、国家の外の地域との交流拠点としての機能が着目されています。

どうして、この地域の支配システムが、列島中央の地域の支配システムと異なったのでしょうか。これは、古代国家が、この地域を国家の外と接した境界となる地域ということで、きわめて重視していたからにほかなりません。

今回は、このことについて、古代国家の成立期(7世紀後半~8世紀前半)に絞って、列島の北と南で見つかった官衙(役所)遺跡の発掘調査の成果を具体的にご紹介しお話ししてみたいと思います。そして、列島の北と南という古代国家の境界となる地域のもつ意味を考えてみたいと思います(なお、当日もお話ししますが、タイトルにある列島の北と南は、正しくは古代国家の東と西という言葉を使うのが適切です)。