このページの目次
第395回「変りゆく着物-幕末から昭和初期-」第394回「身体をめぐる商品史-学問と企業の役割-」第393回「博物館資料のさまざまな見方・見え方-デジタルが見せる博物館資料の未来-」第392回「お盆の歴史と民俗」第391回「シーボルト・コレクションにおける漆工芸」第390回「書簡が語るシーボルト像」第389回「遺跡が語る先島(八重山・宮古)と琉球」第388回「万年筆の魅力」第387回「博物館とデジタル資料」第386回「石碑の中に歴史をよむ」第385回「にせものの文化史」

第395回「変りゆく着物-幕末から昭和初期-」

開催要項

日程 2016年12月10日
講師 澤田 和人(当館情報資料研究系)

開催趣旨

今日の着物には、黒紋付・訪問着・小紋など、様々な種類があります。このような着物の種類は、いつ頃生まれたのでしょうか。昔の着物と今の着物との間には、どのような相違があるのでしょうか。

幕末から昭和初期は、着物が大きく変りゆく時期でした。近代に入ってからの生活様式や習慣の変化、百貨店という大規模小売業の台頭、染織技術の発達など、いくつもの要因が関係しあい、着物を変えていっています。

とくに注目したいのは、百貨店の活動です。初期の百貨店は多くは呉服店を前身としています。呉服店の花形商品が女性の着物であったことを受け継ぎ、近代の百貨店では女性の着物の販売に力を入れていました。明治時代後期になると、百貨店は「今年の流行」を打ちだし、次々と女性の着物の流行模様を提示し、消費を促していきました。近代は、女性の着物が百花繚乱の様相を呈した時代と言えます。

そうした百貨店による流行の創出が、模様のみにとどまらず、着物の種類までをも変えていったことを、お話ししたいと思います。

第394回「身体をめぐる商品史-学問と企業の役割-」

開催要項

日程 2016年11月12日
講師 岩淵 令治 (学習院女子大学)・青木 隆浩(当館民俗研究系)

開催趣旨

「江戸趣味」の成立【岩淵 令治】
「伝統」は、後世において発見されるものです。近代初頭においては、均質な「国民」の創出にあたり、「国民」に共通する文化的な基盤が求められ、“日本的伝統”は、古代に求められました。「江戸」は生活レベルでは継続した世界でしたが、欧化政策においては断ち切るべき「旧慣」だったのです。しかし、国民国家の形成の中で、旧幕臣や佐幕派の人々が社会的復権をとげ、1889(明治22)年の東京開市三百年祭開催を契機として、政治的なレベルでの和解と取り込みが始まります。さらに、江戸時代が直近の過去となるにつれ、文化人や学者の中で、江戸時代生まれ世代による江戸懐古と、未体験世代によるユートピアとしての江戸の発見によって、「江戸趣味」が生起し、商品化に利用されていくこととなりました。ここでは「江戸趣味」成立の様相を見ていきたいと思います。

企業における昭和以降の歴史・文化への関心―石鹸・歯磨類と化粧品を例に― 【青木 隆浩】
石鹸・歯磨類と化粧品の分野では、多くの企業が業界や商品の歴史、さらに関連する生活文化の変遷に関心をもってきた。その最大の理由は、おそらく商品開発と広告に必要な情報を収集し、製造・販売・広報に役立てるとともに,消費者にそれらの意図を伝える目的があったからだと思われる。まず、石鹸・歯磨類に関しては、近代日本の人々があまり入浴せず、歯を磨かない実態を理解するために、企業が生活習慣の歴史や諸外国の情報を必要としていたことを振り返る。化粧品については、流行の変遷とその背景がより複雑であるが、歴史・文化の研究成果が一部で商品開発やデザインに取り込まれていたことを紹介したい。

第393回「博物館資料のさまざまな見方・見え方-デジタルが見せる博物館資料の未来-」

開催要項

日程 2016年10月8日
講師 後藤 真 (当館研究部)

開催趣旨

博物館の展示資料を見るときは、当然決まった見方というものがあります。例えば古文書であれば、文書なので「読む」ことに主眼をおいて見ることになります。しかし、現在の歴史学は古文書を読むだけでなく、さまざまな視点から分析をしていき、それによって、あらたな可能性が見出せることが分かってきました。例えば、古文書の紙はどのような材料でできているでしょうか?では、墨はどこの誰がどうやって作ったものでしょうか?そのような観点から、古文書をみていくと、古文書は人間の生活を知る別の材料としても見えてきます。同じように、土器や建築物などでも多様な見方をすることができるのです。

そして、これらの多様な見方を支える技術がコンピュータです。コンピュータの登場で、人間の情報取得の方法は大きく変わってきました。特に多種・多様な情報を見つけることには大きな力を発揮するようになります。

博物館のモノを今までとはちょっと違う見方をしてみることと、そしてそのような見方にコンピュータがどのような役割を果たしているかについて話をします。

第392回「お盆の歴史と民俗」

開催要項

日程 2016年9月10日
講師 関沢 まゆみ (当館民俗研究系)

開催趣旨

「お盆といえば先祖の墓参り」といわれてきました。しかし、1980年代半ば以降、お盆はお盆休み、夏休みの一種ともなって、アウトドアや海外旅行など、その過ごし方が多様化してきています。葬式や墓をめぐる近年の変化には大きなものがありますが、それら新しい変化のなかで、お盆のような先祖の霊魂(みたま)をまつる習俗はいま、日本各地でどのようになっているのでしょうか。まずお盆とは何か、日本の歴史の中に探ってみましょう。古くは『日本書紀』の斉明三年(657)の記事にまでさかのぼれます。しかし、民俗学の柳田國男は、盂蘭盆は仏教行事として古くからあったが、それとは別に死者に供える飲食物の容器の意味の盆=瓫(ホトキ・ホカイ)の行事があったと述べています。講演では、(1)柳田のお盆について、(2)日本各地の盆行事の地域差とその意味について、(3)葬儀と墓の変化のなかで死者の霊魂をめぐる習俗や観念が今どのようになっているのか、などこれまでの民俗学の研究成果を紹介してみます。

第391回「シーボルト・コレクションにおける漆工芸」

開催要項

日程 2016年8月13日
講師 日高 薫 (当館情報資料研究系)

開催趣旨

二度の来日を通じてヨーロッパに持ち帰られたシーボルトの民族学的コレクションの中で、漆工芸品が占める数量的割合は極めて多く、とくに2回目の訪日時に収集されたと考えられているミュンヘン五大陸博物館所蔵のシーボルト・コレクションの漆器は500件をはるかに超えています。シーボルトが漆器の収集にとりわけ熱心に取り組んだことが明らかといえます。

本講演では、9か年にわたるドイツ・オランダにおける調査研究の成果をもとに、コレクションに含まれる多彩な漆工品の実例を紹介します。そしてシーボルト自身が書き残した記述を手掛かりにしながら、シーボルトがどのような意識でそれらを収集したのか、そしてどのように彼の日本コレクションに位置づけようとしていたかについて考えてみたいと思います。

第390回「書簡が語るシーボルト像」

開催要項

日程 2016年7月9日
講師 宮坂 正英 (長崎純心大学)

開催趣旨

ドイツ在住のシーボルトの末裔フォン・ブランデンシュタイン家にはシーボルトに関連する大量の文書資料が残されています。1983年に当主のコンスタンティン・フォン・ブランデンシュタイン氏がブランデンシュタイン城を相続した際に、ドイツ南部にあるミッテルビベラッハで保管されていた資料が移管統合されブランデンシュタイン家文書が成立しました。

この文書中には、約700通の書簡が含まれているがほとんどの書簡はいまだに未解読のままになっています。

シーボルト研究はドイツ側で評伝を著したハンス・ケルナー以外にこの書簡を活用しないまま進められてきました。1983年来より長崎市シーボルト記念館により開始された文書の調査と整理は国立歴史民俗博物館により画像のデジタル化とデータベース化がすすめられています。

今回の講演では、没後150周年特別展に合わせ、シーボルトが晩年家族と交わした書簡を中心に、その時々のシーボルトがおかれていた状況や心情を紹介し、シーボルトの人間像の一端を紹介してみたいと思います。

第389回「遺跡が語る先島(八重山・宮古)と琉球」

開催要項

日程 2016年6月11日
講師 小野 正敏 (当館名誉教授)

開催趣旨

沖縄の竹富島と聞けば、誰しも、美しい珊瑚礁の海、整然とした方眼の道、石垣と福木に囲まれた赤瓦の民家を思い浮かべます。古き良き沖縄の「原風景」として、多くの観光客を惹きつけるあの景観は、どのように生まれたのでしょうか。その答えが、観光客がけして行くことのない島の深い密林の中に隠されていました。

八重山や宮古には、現集落から離れたジャングルの中に、見たこともない姿の村跡が残されています。屋敷からは、彼らが食べた貝殻や使った中世の陶磁器が拾えます。こうした廃村には、現在の御嶽(うたき)があり、聖地となっているところも多いです。村立てや人びとの出自伝承と結びつき、また神事の際の聖水が廃村の井戸から汲まれたりします。廃村は、御嶽の信仰や組織、伝承などを通じて現在の集落や住民と時間を超えた小宇宙を作っています。

なぜ中世の村が廃村となって残されたのでしょうか。一方で、地上に何の痕跡もみえない発掘しないとわからない村跡も多いです。そんな先島の村々には、琉球によって先島が征服され消されてしまったかつての「八重山」「宮古」時代の記憶が隠されています。かすかな記憶を読み解きながら、「琉球」だけではない、もうひとつの沖縄―先島の姿をたどってみようと思います。ここは、文字に書かれた歴史はほとんどありませんが、土地に残る記憶と人々に伝承された記憶とから、豊かな歴史像が描ける世界です。

※5月は講堂改修工事により講演会をお休みさせていただきました。。

第388回「万年筆の魅力」

開催要項

日程 2016年4月9日
講師 小池 淳一 (当館民俗研究系)
開場 ガイダンスルーム
時間 10時30分~11時30分、13時00分~14時00分 (2回開催)
定員 各回90名
備考 ※2回とも同じ内容となります。
※当日開館時より整理券を配布いたします。

開催趣旨

万年筆は魅力に満ちています。日常的に使う筆記具としても、コレクションの対象としても魅力があります。その魅力は、「書く」という行為や文章を綴るという経験と隣り合わせであり、それらと連続しているともいえます。

その魅力はボールペンやシャープペンシルとは異なる独特の書き味であったり、軸やクリップのデザインや装飾であったり、万年筆に込められた職人の技であったりします。さらにさまざまな色のインクを使うことができることも、その一部でしょう。この講演では、そうした魅力の根源と展開について、企画展示「万年筆の生活誌―筆記の近代―」に至るまでのさまざまな議論を紹介しながら考えてみたいと思います。

なるべく関係する資料を紹介しながら、かつて身近であった筆記具に込められた意味を改めて思い起こし、万年筆を民俗学的あるいは近代生活史の中に位置づける可能性について述べていく予定です。

第387回「博物館とデジタル資料」

開催要項

日程 2016年3月12日
講師 安達 文夫 (当館情報資料研究系)

開催趣旨

歴博では、資料の画像を非常に高精細にデジタル化し、展示や研究の場面で利用してきました。これをデジタル資料と呼んでいます。一種の複製と見ることもできます。研究では実物の資料に当たるのが本来のすがたです。では、なぜデジタル資料が求められたのでしょうか。展示において、デジタル資料が好評いただいていることがアンケートのご意見から伺えます。操作が分かりやすく見やすいことを念頭に、システムを作ってきました。しかし想定したように使われているか、改善すべき点がないかを見るために、利用の状況を記録し、これを分析してきました。本講演では、この結果を基に、デジタル資料の意義と役割について考えます。

第386回「石碑の中に歴史をよむ」

開催要項

日程 2016年2月13日
講師 三上 喜孝 (当館歴史研究系)

開催趣旨

文字を石に刻んだ「石碑」は、ときに通常の歴史書にはあらわれない歴史の別の一面をかいま見ることができる、大変貴重な歴史資料です。日本列島において、石碑は7世紀後半頃から作られはじめますが、これは、中国や朝鮮半島の石碑の文化の影響を受けてのことでした。ところが、中国や朝鮮半島にくらべて、日本で石碑の文化が根づくことはありませんでした。このような違いがなぜ起こったのか、中国や朝鮮半島、日本の石碑の形態や内容を比較しながら考えていきたいと思います。あわせて、日本の石碑文化が古代から近代にかけてどのような歴史をたどっていったかを概観しつつ、石に刻まれた文字からうかがえる、過去の人々の心性にせまってみたいと考えています。

第385回「にせものの文化史」

開催要項

日程 2016年1月9日
講師 小瀬戸 恵美 (当館情報資料研究系)

開催趣旨

現在ではコピー商品や食品偽装など、さまざまな「にせもの」が世の中を賑わせています。悪意のあるにせものから、悪意のないにせもの、にせものにされてしまったほんもの、など、さまざまな「にせもの」とそれらが生まれてきた背景を紐解きながら、なぜ、にせものが生み出されるのか、なぜ、私たちはにせものに騙されるのか、ひいては、にせものという概念を作り出しているものは何なのかを考えていきたいと思います。