データベース概要

中世制札データベース

Medieval Notice Board Database

公開年月:2006年12月


 制札(せいさつ)は、高札(こうさつ/たかふだ)とも呼ばれ、掲示できるように木の板に書かれた文書です。
 このデータベースでの対象時期は、始めは現存最古とされる文治元年(1185)から、終わりは便宜的に慶長6年(1601)までとしました。半端なのは、丹後金剛心院に慶長6年まで一連の制札があることによりますが、一般的にもこのころ以降の物は近世制札として扱うのが適当と思われます。

 項目としては、発給者・宛所・日付などの文書としての基礎的な情報と、記載された主な内容の他、大きさや、屋根・釘穴、木材の状態などの、物としての情報についても、できる限り掲載しています。

 ただ、これらの情報は、必ずしも実物を調査した結果ではなく、さまざまな文献から引用したり、掲載されている写真を元に作成したりしたものが多数を占めます。そのため、どの文献を典拠としたかを明示するため、「参照文献」の欄を文献データベースとリンクさせ、直接表示することができるようにしてあります。文献データベースの側からも、そこで取り上げられている制札のデータにリンクするようになっています。
 写真については、当館の所蔵資料ではないため、ここでは掲載していませんが、これらの文献をご覧ください。(最近では、自治体のホームページが文化財紹介として制札の写真を掲げる場合も増えていますので、そこで見ることができる場合もあります。)

 制札の内容としては、現存の中世制札で最も多いのは、軍勢の狼藉行為を禁じたもので、特に寺社宛てに、自らを守る根拠となるこの種の制札が多く出され、また保存されてきたことは自然です。その他には、戦後の村や町へ住人が還住することを勧めたものや、楽市令のような、市場や都市に特権を与えたものなども見られます。
 中世制札の内容は、基本的に個別の対象に利益を保証するもので、領主からの一方的・一般的な命令が中心の江戸時代の高札とは、この点が大きく違っています。

 形状は、古いものは概して縦長で、次第に横長になる傾向が見られます。(江戸時代の高札が一般的に横長であることとは、この点でも対照的です。)この点を比較するために、「縦横比」の項目を設けてあります。様式的には、室町幕府が文明年間頃に定めたと考えられる三箇条制札の書札礼も影響力を持っていたようです。
 以上、詳しくは、歴博ホームページの中にある「中世の制札」という解説を御覧ください。

 なお、データの作成と補訂に際しては、下記の方々から御教示を得ました。記して御礼申し上げます。
橋本道範・藤田励夫・三宅唯美・久野修義・三宅克広・高屋茂男・山内譲・田良島哲・高木叙子・松下浩・森下大輔・市沢哲・竹井英文(敬略)


データ項目の説明

<制札DB>

データ項目 内容
番号 個々の制札に付したIDとしての番号。公開時点での年代順に付されている。
発給者 制札の発給者(書判・押印などをしている人物)。
和暦年月日 発給された日付を和暦(元号)で表示。
西暦年月日 発給された日付を西暦年で表示。
11桁表記で最初の4桁は年(次の2桁が99なら推定)、次の2桁は月(次の1桁が5なら「閏月」)、最後の2桁は日。
宛所 発給先(寺社・町など)。
法量縦 縦方向の法量(㎝)。
法量横 横方向の法量(㎝)。
法量厚さ 板の厚さ(㎝)。
縦横比 縦 ÷ 横の数値。数値が1以上だと縦長、1以下だと横長になる。
所蔵者 制札の所蔵者。
条数 制札本文が何条から成っているかを示す。
内容 制札本文内容の要約。
風化・変色 木質の変化(風化ないし変色)を示す。
釘穴・釘痕 釘を打った痕跡とその数、および部位(板面、天部木口、底部木口)を示す。
木目等 正目・板目の別、および板のその他の特徴。
国名 宛所の所在する国名。
備考 形態・状態などについての関連する情報。
参照文献 典拠とした研究文献(原則として、写真が掲載されているもの)。
「文献情報データベース」とリンクしている。

<文献DB>

データ項目 内容
文献ID 個々の研究文献に付したID番号。基本的に公開時の年代順。
文献著者 研究文献の著者。
文献名 論文名または地方史等の章名など。
文献出典 論文の場合は、収載されている雑誌名等。図書の場合は、図書名。
刊行年 研究文献(収載雑誌または図書)の刊行年。
所収制札 研究文献が対象としている制札(原則として、写真を掲載しているもの)。
「制札情報データベース」とリンクしている。
関連国名 所収制札の宛所の国名。
文献備考 研究文献についての、再録などのその他の情報。