データベース概要

江戸商人・職人データベース

A Database of Edo Merchants and Artisans

公開年月:2006年3月
更新年月:2022年6月

 本データベースは、近世都市江戸の商人・職人の名鑑や株帳等から、居所、職業、所持株等の情報を抽出し、横断的な検索ができるようにしたものです。2006年3月に『江戸買物独案内』(本館蔵)2600件余を搭載した後、「諸問屋名前帳」(国立国会図書館所蔵)、「両替地名録」(当館蔵)等を順次公開していく予定でしたが、その後、更新が止まっていました。今回、この2種および関連する資料のデータ(3万9456件)を加えて、更新しました。これにより、19世紀第2四半世紀以降、幕府が把握していた江戸町方の商人・職人仲間の構成員をおよそ捕捉することができると考えます。 また、新たな資料によるデータ追加にともない、検索項目と内容を一部変更し、備考欄を充実させたほか、商人・職人名が男名前であるか女名前であるかの情報を加えました。詳しくは、下記「Ⅰ出典について」「Ⅱ表記について」をご参照下さい。

 本データベースでは、下記「Ⅰ出典について」に記した(1)~(6)の原本またはその画像からデータを採録しました。採録にあたっては、「Ⅰ出典について」に記した江戸商人・職人に関わる諸研究、および田中康雄編『江戸商家・商人名データ総覧』(柊風舎、2010年)を参考にしました。記して感謝いたします。

I.出典について

(1)『江戸買物独案内』(本館蔵) 2617件
本館資料番号H-1607-1『江戸買物独案内』上(第一冊)、H-1607-2『江戸買物独案内』下(第二冊)、H-1607-3『江戸買物独案内』飲食(第三冊)。『江戸買物独案内』は、中川芳山堂(五郎左衛門)編、文政7(1824)年刊行の版本で、商店名を業種別・いろは順に紹介する。【出典】には、原本の巻数(「上」「下」「飲食」)と何丁目に記載されているかを記し、丁の表・裏を「オ」「ウ」と記した(例『江戸買物独案内』上1オ)。データ件数、2617件。本資料は、国立国会図書館デジタルコレクションで、画像が公開されている。また、西山松之助編『江戸町人の研究』第三巻(吉川弘文館、1974年)に翻刻が掲載されている。

(2)白木屋文書「問屋株帳」(東京大学経済学部蔵) 2769件
東京大学経済学部所蔵の白木屋文書「問屋株帳」45冊(請求記号B4-1~B4-45)。本資料は、文政2(1819)年の三橋会所廃止にともなって作成されたと考えられ、菱垣廻船積問屋仲間所属の問屋仲間の大部分を収録し、文政2(1819)年~天保12(1841)年の異動が記録されている。異動情報の表記については、「Ⅱ表記について」⑦【備考1】を参照のこと。本資料は、東京大学経済学部図書館・経済学部資料室デジタルアーカイブEngel(古文書(白木屋文書ほか)データベース)で画像が公開されているほか、石井寛治・林玲子著『白木屋文書 問屋株帳』(るぽわ書房、1998年刊)に翻刻が掲載されている。

(3)旧幕引継書『諸問屋名前帳』(国立国会図書館) 2万3688件
旧幕引継書『諸問屋名前帳』(請求記号811-21)は、嘉永4(1851)年3月問屋仲間再興にともなって作成された商人・職人仲間の名簿である。57巻(58冊)。実印付で名前が登録され、再興時から明治初年までの株の譲渡、新規加入、廃業、改名、改印、転宅、家主および店支配人の変更などの異動情報が書き継がれている。本データベースにおける異動情報の表記については、「Ⅱ表記について」⑦【備考1】を参照のこと。本資料は、国立国会図書館デジタルコレクションで、画像が公開されている。また、国立国会図書館旧幕引継書目録3~6『諸問屋名前帳:細目』一~四(1961~1964年)に名前と異動が略記されている。本データベースでは、【出典】の項に『諸問屋名前帳』原本の目次・巻号を記したほか、参考として国立国会図書館旧幕引継書目録3~6の巻号・掲載箇所(頁数とページ内の位置)を記した。国立国会図書館旧幕引継書目録3~6『諸問屋名前帳:細目』一~四は、1978年に湖北社より、2001年に文生書院より再刊されている。

(4)旧幕引継書『諸問屋仮組名前帳』(国立国会図書館) 1546件
旧幕引継書『諸問屋仮組名前帳』(請求記号811-19)は、『諸問屋名前帳』(同811-21)と同じく、嘉永4(1851)年3月問屋仲間再興にあたって作成された名簿である。4巻5冊。問屋仲間本組に加入していない仮組の諸問屋、商人・職人の名前等が記され、(3)旧幕引継書『諸問屋名前帳』と同様に異動が書き継がれている。異動情報および出典の表記は、(3)『諸問屋名前帳』と同じである。本資料は、国立国会図書館デジタルコレクションで、画像が公開されている。

(5)旧幕引継書『八品商名前帳』(国立国会図書館) 9973件
旧幕府継書『八品商名前帳』(請求記号811-12)は、(3)『諸問屋名前帳』と同じく、嘉永4(1851)年3月株仲間再興の許可にともなって作成された八品商人の名簿である。46冊。本データベースでの表記は、(3)旧幕引継書『諸問屋名前帳』と同じである。ただし、本資料は国立国会図書館旧幕引継書目録1~12には含まれていない。国立国会図書館デジタルコレクションで、画像が公開されている。

(6)嘉永7年・安政4年『江戸府内 両替地名録』(本館蔵) 1461件
本館資料番号H-1606-1『江戸府内 両替地名録(嘉永七年)』、同H-1606-2『江戸府内 両替地名録(安政四年)』。両替屋仲間の地域ごとの組合員名簿である。版本であるが、冒頭に「両替掟」として通用金の重量等が記され、末尾に「禁市売」の記載があることから、仲間内での利用に供されたものと考えられる。三井高維編著『新稿両替年代記:関鍵』巻一(岩波書店、1933年)に翻刻が掲載されている。同書は、1971年に柏書房より、1995年に岩波書店より再刊されている。

II.表記について

①【商人名】
記載されている商人・職人名と屋号。
②【居所】
記載されている地名を記した。「町」、「丁」は、史料中の表記に従った。
③【現在地】
居所が、現在の何区にあるかを記した。区名を判断しかねる場合は、先頭に※印を付した。
④【本国】
当主が居所または江戸に不在で、居住地が記載されているものについては、これを記した。
⑤【職種・所持株】
該当する職種・所持株の名称。該当する職種に当たる文言が資料中にない場合は、( )に該当する職種を記した。史料中に「十組」「伝馬町組」などの表記があるものは、これを記した。
⑥【出典】
資料名と巻号を、所蔵/管理機関の表記にしたがって記した。そのほかに刊行された目録がある場合には、その情報を記したものもある。
⑦【備考1】
居所の移転、身分(家持・地借・店借・家主等)等の変更、株の譲渡・相続、本人の生死・改名等の変更情報のある者については、【備考1】に記した。異動がある者については、【備考1】の冒頭、または異動・変更の時点を■で示し、内容を摘記した。
⑧【備考2】
資料中に補足の情報があるものについて、「 」で記した。また、『江戸買物独案内』については、★を付して出典の欠損等を記した。
⑨【備考3】
商人・職人名が、男名前であるか、女名前であるかを判断して記した。

このほか、各項目のうち、屋号や居所などが当該箇所の前の記述を受けて「同・・・」などとされている場合、適宜該当する語句に置き換えた。各項目のうち、記載がないものは、「-」とした。明らかに間違いと判断されるものについては、(ママ)を付し、当該欄または【備考2】に、適宜参考情報を記した。原則として原本の文字をそのまま使用したが、資料中に新字と旧字が混在しているものがあるほか、採録の際に新字に改めたものがある。